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11. 振り向かない恋の花
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知らない、知らない、知らない……
こんな奏、俺は知らない…
「どうしたら、日向の『嫌いじゃない』は『好き』に変わってくれる?俺はあと、日向の為に何をしたらいい?」
「か、なで…」
「教えてよ、日向」
違うだろ、奏。
奏は、いつも。日向は危なっかしいって言いながらふわって笑って、俺と同じでちょっと抜けてて、でも、でも。
俺を大切にしてくれる。
俺を、俺を……
「日向が一番欲しい言葉をあげようか」
ダメだ、やめろ。
違う、そういうことじゃないんだよ。
俺は、こんなものが欲しいんじゃない。
こんな、薄っぺらい物じゃ――
「日向。俺には日向が必要なんだ。もっと俺を頼って。俺に縋って。俺を、好きになって」
「――っやめろ!!」
奏の一つ一つ、言い聞かせるような言葉が俺の頭の中でゆっくりと熱を滾らせて、溜まり膨れ上がったそれが真っ白に爆ぜた瞬間。
右手の平に、痺れが走った。
すぐさま熱が冷めて我に返るけれど、もう遅い。
勢いよく身体を起こした俺の視線の先で、奏の左頬がくっきりと赤く腫れていく。
殴ったんだ。
初めて、人を――
「っ……」
やってしまった。
どうしようどうしようどうしよう。
混乱する視界の端で、殴られた衝撃で俯いた奏の頭がゆらりと動く。
何て言われる?
どんな目を向けられる?
俺は、俺は――
どうしようもなく、怖くなって。
俺はそこから、逃げ出した。
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