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12. 惹かれ合った呼び声は陽だまりの元へ
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錯乱した頭で走る夜道は酷く頼りない。
それは、寄る辺を失ったからか、それとも人を傷付けた罪を自らの心が詰っているからか。
きっとどっちもで、だからこんなにも息が苦しいんだ。
視界が急に薄暗く狭まった気がして、それでも必死に、もつれそうになる足を動かしているけれど最早、自分が自分の家に向かっているのか、そもそも前を向けているのかすら怪しくなってくる。
何で、何で。
ほんの数時間前まで、この道を笑って歩いていたはずなのに、どうして…
どこで、こんなことになったのだろう。
いつから奏はあんな風に考えていて、いつから――
いつから、俺を重荷に、感じていたのだろう。
「っごめん、ごめん、なさい…っ」
歪む視界が熱く揺れて、ここがどこだか分からない。
街灯の明かりと月の光が奇妙に混ざり合って、眩しくて、ごしごしと目を擦るけれど余計にぼやけてしまって。
頭の中が、子供の粘土遊びみたいにどろどろでぐちゃぐちゃで、息が苦しくて胸が痛くて、それはまるで、昔の俺みたいで。
でも、頼るものも縋るものももう、なくなってしまった。
どうしたらいい。
どうすれば良かった。
どうしたら、奏を傷付けずに済んだ?
頭の中で、一番嫌いな人間が鬼の首を取ったように高笑いをするんだ。
ほら、やっぱり俺なんか――…
「っひなたちゃん…?」
最悪の想像へと突き進んでいく俺の混乱を切り裂いて。
見慣れたあたたかい金と蒼の光と、やわらかく包むような呼び声が、木霊した。
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