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12. 惹かれ合った呼び声は陽だまりの元へ
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突き刺さる冷たい視線と、凍てつき湧き上がる黒い影。
例え取り乱していなかったとしてもそんなこと気付かない俺は、どうして朔夜が「家上がらせてもらっていい?」と聞いたのにも関わらず俺を自身の車に押し込んだのか、分からなかった。
てっきり家に帰るんだとばかり思っていたから余計に混乱して、まさか昨日みたいにいきなり車の中でヤろうなんて考えているんじゃ、と疑って警戒して。
けれど朔夜がいつになく真剣な顔で、助手席に凭れた俺を撫でて、大丈夫って言うから。
訳も分からず、安心して。
発進した車の心地よい揺れと、徐々に平静に戻りつつある精神の疲労で、どっと一気に瞼が重くなって、気付けば。
浅い眠りの淵へと、落ちていた。
――…
「…なたちゃん……ひなたちゃん、起きて」
「う、ん……?」
心地好いあたたかな眠りの淵からゆっくりと揺り起こされていく意識の中、やわらかく優しい朔夜の声が響く。
重たくのしかかる瞼をそっと開ければ、穏やかな微笑みと目が合った。
「着いたよ。外少し寒いから、これ着て」
「ん…ありがと」
手渡された厚手のパーカーを見て、俺は自分の上着を奏の部屋に置き忘れたことに気付いた。
――奏……
今、どうしてるだろう。
考えることがだるくて、逃げたくて。
何も気付かなかったふりをして、その憎たらしいほどぶかぶかのパーカーを羽織って車のドアを開けた。
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