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12. 惹かれ合った呼び声は陽だまりの元へ
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オートロックのエントランスの次は指紋認証のエレベーターで、気圧の変化で耳が痛くなるほど上がったと思ったら部屋のドアは指紋と網膜認証、そしてカードキーの三段階ロック。
「…ちょっと警備厳重すぎじゃない?」
「当たり前。っていうか、じゃなきゃひなたちゃん連れてきてないよ」
ピ、とカードキーをかざした瞬間に青っぽいランプが光り、扉の施錠が解除される。
防音設備なのか、重厚な扉をぐっと押し開ければ、部屋の中は、まるで。
「…モデルルームみたい」
いつだったか女子が騒いでいた雑誌に特集されていたような、広々とした空間に白と黒の統一感を持ったシックな調度品の数々。
そのどれもがきっと有名なインテリアデザイナーの手がけたものなのだろう、本棚も照明も、見たことも無い形をしていてお洒落さが増していた。
奇妙に曲がった太い針金のような家具は一体何に使うのか、近づいて弄っていたら、大きなソファにぼふっと腰を下ろした朔夜が手を広げて俺を呼ぶ。
「ひなたちゃん、おいで」
「――………」
その仕草が、とても、とても。魅力的に見えたのは、多分。
無条件に俺を癒してくれると、分かったからだ。
大人しく歩み寄って、広げられた手の中に身体を埋めて胸元に鼻先を擦り付ければ、間髪入れずにぎゅ、と背中に逞しい腕が回って力が込められる。
「――いい子…」
耳元で紡がれる囁きはとろけそうなくらい甘やかで、縋り付いた胸元からも、俺の着ているパーカーからも、朔夜の匂いがして、全身が甘く包まれている安心感が心を覆っていく。
不安なことも嫌なことも、全部溶かして消してくれるようなあったかさは、直後の朔夜の提案に吹き飛ばされていった。
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