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12. 惹かれ合った呼び声は陽だまりの元へ
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叶うならばこれが全部、夢だったら。嘘だったら。
長い長い人生の内、そう思うことは一体何度あるのだろう。
それはつまり、人間は何度失敗と挫折を積み重ねて、生きるのかということ。
「――…悩み事?」
「………入ってくんなよ…」
お湯に唇を突っ込んでぶくぶくと息を吐き、目を閉じた暗闇の中でかけられた声は湿気を帯びたせいかいつもよりも艶やかで優しい。
音もなくいつの間にか忍び寄っていた朔夜が、浴槽の淵に手を付いて沈み込む俺の隣に身体を浸からせた。
――…こんな広いんだから、もっと離れてもいいのに…
そう思いはするものの、寂しがりな身体は無意識に朔夜の方に寄って、こてん、と頭を朔夜の肩へと預けた。
苦笑しつつも受け入れてくれる朔夜の骨ばった大きな手が、濡れて張り付く俺の髪を何度も撫でて滑り落ちていく。
「朔夜は……なんで、俺が悪いって思わないの?」
「ん?んー……ひなたちゃんが、自分が悪いって思ってるからかな」
「???何それ」
「自分のこと責めてるやつに、『そうだお前が悪い』なんて追い打ちかけるほど俺は鬼畜じゃないよ。まして、あいつのあの視線見たらな……」
朔夜の言っていることは時々よく分からなくて、きっとそれは俺の理解のキャパを超えているというよりは単に人生経験の差なんだろう。
圧倒的に足りない何かが俺達の間を邪魔して、それが少し悔しくなる。
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