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イチゴジャム
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「・・・貰ってないよ」
俺は一言ハッキリと答える。変にごまかした方が面倒そうだ。
「それは受け取ってないってこと?」
受け取ってない、というか受け取れない。
「断る気しかないのに、受け取ってもな・・・一回冗談半分で付き合って、面倒くさいことになった」
俺は肩を竦めて見せる。
「あはは、そりゃあ大変だ」
楽はケラケラと笑って、パンにイチゴジャムを塗りたくった。甘いのが好きらしい。
「・・・どうして急にそんなこと聞いたんだ?」
俺は尋ねて、パンを一口齧る。
いちごジャムは塗ってないが、充分だ。パンの香ばしい匂いとマーガリンの程よい塩気が口に広がった。
「ん~・・なんとなく?貰ってそうだなって思ったから聞いただけ」
「・・・へえ、それはどうも」
「あれ?君みたいなのにとっては、ちょっと皮肉みたいになるかなぁって思ったんだけどな」
楽はいつもの笑顔で言う。腹の立つ笑顔だ。
「あんたにそんなこと聞かれちゃ、こっちは気が気じゃないんでね」
俺は冗談めかして言って、肩を竦める。
「へぇ・・・そっかぁ・・・というか、尼野くんって本当に表情が変わらないよね」
楽はそう返して、そのいちごジャムのたっぷり乗ったパンに齧りついた。小さい口はすぐに汚れて、パンに塗っていたいちごジャムは口を拭う動作でボタボタと皿に零れる。
「・・・食べるのが下手にも程がある」
「いやぁ、これがいいんだよ・・・零れるくらいのいちごジャムってロマンがあるでしょ?」
俺がぼそりと突っ込むと、楽は親指についたいちごジャムを舐めとって心底嬉しそうにニタリと笑った。コイツがやると、ちょっと変態じみている。
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