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《君の声で僕を呼んで》14
《空…そーら、ほら起きて、空ったら!
もうっお寝坊さんねっ》
「ん…んん?あれ、俺寝たはず……」
「やっと起きた!
空ったらお寝坊さんなんだからっ」
いつもの悪夢…だと思ってたけど今日のは母さんも父さんも雰囲気が違う。
なんだ、今日は上げて下げる悪夢なのか。
「空ったら聞いてるの〜!?
聞いてなかったでしょ!まったくっ」
「あ、あぁ…聞いてなかった。
で、今日はどんな方法で俺を責めるわけ?」
もう夢の両親に傷つけられたくない。
だってこの親は本物じゃないんだから。
それなら全力で警戒してやる。
「空の見ていた夢のお母さんはどんな人だったのよ?
責めるって、お母さん空のこと責めたことないでしょ〜!?現実のお母さんより夢のお母さんを信じるなんて傷ついちゃうわよっ」
「現実なわけない。
だって母さんそんなに語彙力ないし」
「あーっ!言ったわね?
お母さんね、今天国にいるの。
天国っていうより天国と地獄の間よ。
ここでは神様が適切な言葉を選んでお母さんに教えてくれるのよっ!
だからこんなにお話ができるの!」
ふふん、すごいでしょ!と微笑む母さんは施設にいた頃とは比べ物にならないくらい幸せそうだった。
現実の母さんだってことは信じられないけど責めてこないならまだ…まだマシ。
「ねェ空…ごめんなさい。
施設にいた頃、ちゃんと愛してあげられなくて……
あの頃のお母さんとお父さんね、愛し方がわからなかったの。
でもね空、これだけは信じてほしいの。
お母さんもお父さんも、あなたを愛しているのよ。
ふふっ…少し恥ずかしいわね。
ねェ空…あなたは今、幸せ?」
これが夢…なんて残酷な夢なんだろう。
こんな幸せな夢を見て目が覚めて現実を見たらきっと正気でなんていられなくなる。
母さんは、父さんはもう…どこにもいないのに……
「うん…幸せだよ…。
微はまだ目を覚まさないけど。
俺、夢ができたんだ。
警察官になりたいと思ってる。」
本物じゃない親に言ったって無意味だとはわかってる。
けどやっぱり母さんの姿を見ると口がゆるくなる。
「そう…ちゃんと夢ができたのね。
ふふっ嬉しいわっ!空が夢を持ってくれるなんて。
あのさ…空はお母さんが夢で責めるって言ったじゃない?
逆に空はお母さんやお父さんの事…憎んでないの……?」
そう言った母さんは少し半透明になっていて、この夢が短いことを示していた。
伝えたかった事を、言わなきゃ…声に出して……。
「憎んでない…憎んでないよ…っ ごめんなさい…あの日、酷い事言ってごめんなさいっ……大嫌いなんて嘘なんだよ…大好きで、たくさんたくさん愛してるんだ……連れて逃げられなくてごめんなさい…助けられなくて……… ごめん、なさいっ…………」
「…!空……」
「空…今の空の生活は普通か?
普通なら…その中から特別を見つけるんだ。
特別は必ず普通になる。だからこそ特別を普通の日常から見つけるんだよ。
空…大きくなったな。」
声に出そうと思ったら涙まで出た。
それに言葉は前までの母さん達とそう大差ないくらい支離滅裂だった。
大きくなったな と言ってくれた父さんの目は少し赤くなっていて、今まで見たどの顔より優しかった。
「空、じゃあお別れね。
元気にしなさいよ!お墓はないからたまにでいいから空に向かってお話して。
きっとお母さんたちにも届くから。
あっ、あと!微ちゃん大事にしなさいよーっ!」
「空、元気で。」
半透明だった両親はもうキラキラと少しずつなくなり始めていた。
俺は自分の手をぎゅっと握りしめて次々と溢れ出てくる行き場のない感情に耐えようとしていた。
でも…でもやっぱり……
「待って…!やっぱり嫌だ…俺も連れてって!!
待って……!!」
「っ…空……」
母さんたちと離れたくない。
せっかく分かり合えたのに、やっと分かり合えたのに。
それなら何もかも捨てて、2人と………… ─────
「馬鹿ね空、そのうち迎えに来てあげるわよ。
あと80年経ったら出直しなさいっ!
その時はお酒でも一緒に飲みましょっ」
「ドライブもしよう。」
一緒にいたかった でもちゃんと話すことが出来た。
でもきっと俺はもう、大丈夫。
《「「愛してる…ずっと……」」》
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