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お花屋さん
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綺麗な夕焼け。
「こーちゃん、お待たせーっ」
「凛子、今日は晃さんいいの?」
「いいよ、今日は晃は部活だから。朝いつも一緒だし。」
…相変わらず仲睦まじい。微笑ましいほどに。
「あ、こーちゃん、明日おばあちゃんの誕生日だから花屋寄ってっていい?」
と凛子が言うから思い出す。凛子のおばあちゃんって確か97歳…。そう見えないくらい若い顔していらっしゃるんだよなぁ、と。あと笑った時の目尻がわりと可愛い。優しいおばあちゃん、と言う感じで。俺のとこのおばあちゃんは昔わりと遊んでもらったけど最近会ってないな…、
向かったのは電車で6駅行った先。
「そんなに行かなくても花屋なんてどこにでもあるのにな」と凛子に言ったら「ここの花屋が一番落ち着くのよねぇ」と微笑んだ。
凛子の好きな花屋なのか。
「いらっしゃいませ」
柔らかい女性の声が店内から聞こえる。…聴いていて飽きないような、そんな声。その声を辿ってチラリと見ると、肩まで伸びたさらさらした内巻きの髪、優しそうで綺麗な顔つき、小柄で華奢な体、その花に向き合うたたずまい…、こういう人を美人というんだなと素直に思った。
男がほっとくわけがない…、まぁ俺は女は対象外なんですけど。
「あれ、今日はいつもの人いないんですか。」
「ああ〜、山城さん?ごめんなさい、今日はバイトの私でして…、」
凛子の問いかけに困ったように笑うその人は凛子に近づいて、「何かお探しですか、手伝います」と微笑んだ。
「えっと、おばあちゃん…フリージア好きなので、それと、私…花のことはさっぱりなのであと似合いそうな花をいくつかいれて花束にしていただけますか」
いつもこうやって頼んでいるのか凛子…。
そんな凛子に店員さんは微笑んだ顔を崩すことなく、「わかりました。少しお待ちください」と返事した。
しばらくたっていくつか案を出されて選んで…、こんなにアイディアがあるんだな、とセンスの良さに驚いた。凛子が花を渡されるときにチラリとネームプレートが目に映った。
"久坂"。
どっかで聞いたことあるような、そんな名前。
誰だっけかなー、とか思いつつ頭を巡らす。まあいいか、なんて思いながら店を出ようとしてハッとした。…まさか、ね。
「あの……、久坂さんって…下の名前…」
「え…っと、莉緒…ですけどお会いしたことありましたっけ」
俺がいきなり店内に引き返して近づいて聞くものだから久坂さんも少し困り顔。
久坂……莉緒……。
この人が、もしかして。なんて。
そんな偶然あっていいものなのか。そして、俺が知ったところで、俺は彼らをあわせようとするのだろうか。
「…米崎さん…米崎悠さん、知っていますか」
言いたくない言いたくないと閉ざしている口を一生懸命開いて、声をしぼりだした。正直、聞くのが怖かった。それは、きっとまだ彼に思いがあったから。
久坂さんは目を少し見開いて、一瞬固まった。
「…悠のこと、知ってるんですか…」
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