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俺を抱き抱えながら来たのは保健室。全く疲れを感じさせないまま、ベッドの上に下ろされ、靴を脱がされる。優しく扱われると少し優越感に浸れた。王子様のお姫様みたいで。まぁ、男なんだけど。
「あ、唯ちゃん、ここ貸してよ。今から使うから」
高良先輩の声に少し顔を上げると、髭を少し生やした30代ぐらいの男の人がいる。“白木 唯(しらぎ ゆい)”と書かれたネームプレートをぶら下げ、白衣を来ているから養護教諭だろう。
「は?急に来て何言ってんだ。もうすぐ授業始まるぞ。俺は今から休憩なんだよ」
その男性教諭を“唯ちゃん”と呼び、親しげに話す姿は仲が良さそうだった。呆れる唯ちゃんとやらは、近くにあったコーヒーポットにお湯を注いでいる。砂糖を沢山入れているけど甘党なのか。なんか可愛いな。
「じゃあ、あんまり覗かないでね」
そう言ってカーテンを閉めるが、唯ちゃん先生がすぐに開ける。
「やめろ、俺の首を飛ばす気か」
襟首を掴み、カーテンの外から出される高良先輩は不服そうに唯ちゃん先生を見ている。高良が分かったと肩を竦めると、その手を離しゆったりと椅子に座った。俺からの視線にはなんのアクションも起こさず、出来上がった珈琲を啜っている。
俺も、寝転ぶのをやめ、体を起こす。先輩は授業をサボるつもりなのだろうが、唯ちゃん先生の言う通り、次は授業だ。俺はそっちに行きたい。ベッドから降り、先輩と距離を取りながら2人に近づくと、先生と目が合う。少し驚いたように目を見開いてたが、なんだろう。今の俺に、どこか変なとこがあるんだろうか。
「......男まで手を出したのか」
うんざりしたような溜息に、自分の顔が強ばったのがわかった。先生の声は先輩に向かってる。でも、それは、俺も同じように思われてるのと同じことだから。
「可愛いでしょ。俺の恋人。」
何も気にしてなさそうにそう言い、椅子から立ち上がり近づいてきた先輩から、手を振り回し追い払うように逃げる。逃げ場のないところまで追い詰められて壁にもたれて座り込んだが、追い詰められる足は止まらなかった。嫌がる俺の腕を掴み、強引に引き寄せる。お姫様抱っこされて先生の前に出されると、恥ずかしさで死にたくなった。
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