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(31)(伊藤優視点)
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「そうですね…俺、さっき空くんに欲しいものはある?って聞いたんです
なんて答えたと思います?」
「ない?」
「正解です、特にないですって曇りない瞳で言われちゃ、あぁ本当にないんだろうなってしたくない納得しちゃいました」
「ずっと、生まれてからずっと海だけのために生きることを強いられてきたんだろうな」
「だから自分のために必要なものなんてない、あってもそれを手に入れることはできなかったんでしょうね」
空くんがどんな気持ちで海くんの世話をしているのか、俺には分からない
恨めしい気持ちはないんだろうか
なんで自分だけって、思わないんだろうか
そう思わないように思わないようにして、それでも海くんが羨ましいと思ってしまった時、あの子は大丈夫という呪文を唱えて、自分を保っているのだろうか
「なんか、やるせないですよね
現状を知ってしまったのに、何もできない」
「あいつが海に大丈夫、大丈夫って言う度にお前はどうなんだって言ってしまいそうで、抑えるのに必死だった」
「あの時、高見先生存在消してましたもんね」
「海に大丈夫って言う時の顔は本当に申し訳なさそうで、でも自分が大丈夫って言う時は何も感じていないようなロボットみたいな顔で、それが、俺は何故か怖く感じた」
「俺もです…どうにか、してあげられないかな、不満を吐き出してくれればいいのに」
「一生徒の家事情に教師が首突っ込むのはご法度だからな…」
「せめて、学校では気を休めてほしいですね」
「だな…」
2人して冷めたコーヒーを一気飲みして、どちらからともなく帰る準備をしだす
そこで思い出した
「あぁ、そういえば、明日、空くん来るの楽しみにしておいてください」
「あぁ?なにを」
「それはお楽しみです」
高見先生は元海くん大好き人間だったから、海くんそっくりの空くんを見てどう思うんだろうか
少し楽しみな自分がいた
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