アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(133)
-
「ただいまー!」
「ただいま、戻りました…」
この家の敷居をまたぐ時、吐き気がした
門から玄関まで来るのに重くなる足と比例して心にもどんどん鉛を足されていくような感覚がした
とにかく気分は最悪だった
「あら、おかえり海
空は随分久しぶりね?」
暗に"帰ってこなくていい"と言われているのが分かった
海の手前最低限母親としての役割を果たす"作業"をしているだけの母さんにとっては、僕は邪魔者でしかなくて
そんな僕が居ないなら母さんはその作業をする必要がないのだから、帰ってきたところでまた母さんの面倒が増えるだけだ
「お久しぶりです」
そんなに嫌そうな顔をするなら電話でどうにか済ませてくれれば良かったのに
僕だって好きで帰ってきたわけじゃない
「海、空に少し話があるから部屋で待ってなさい」
いきなり、きた
さらっと本題に移ってもらって早めに帰れた方がいいから、僕にとってはありがたい流れだ
「え、やだ、俺も一緒に聞く」
あれ…海ってこの前まで自分のこと僕って言ってなかったっけ
しかも前は僕より同じか少し低いくらいだった身長が並んでみると少し伸びてる気がする
前と目線が違うし、なんか、体つきが変わってる
「海、お願い、大事な話なの」
母さんってお願いするときこんな声出すんだ
そんな下から見つめるんだ
初めて知った
「空に…何もしないって約束して」
「も、もちろん、最初からそのつもりよ」
あ、今母さん少し吃った
母さんや父さんが僕に暴力ふるったりしてたこと、海にバレてないって思ってたのかな
「空、何かあったらすぐ呼んでね?」
「あ、うん、大丈夫だよ」
「じゃあ、また、後で」
海が階段を上がっていく音が響く
がっしりとしてきている後ろ姿を見つめて思う
海は、もうなんでも1人でできるんだな…
歩けるし、階段だって1人で上り下りできるようになってる
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
135 / 239