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文化発表会当日10
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秋side
優「…これが我々が知っている全ての情報だよ」
遥「…」
嘘偽りなんてない。
僕らが知っている最大限の情報だった。
机に手を付き下を向いたままの遥の姿にはどこか余裕がないようで…。
誰も何もはっしない…ただ沈黙だけが流れていく。
遥「……ッ」
秋「遥?」
少しだけ聞こえた違和感のある息遣い。
不安になった。もしかして…
下から覗き込むとただでさえ白い顔が色をなくしたようになっていた。
その目は下を向いているのにどことも焦点が合っていない。まるで目は開けているのに違う何かを見ているようだった。
秋「ッッ遥!!」
何より驚いたのは遥は無意識に呼吸をしていなかったのだ。
いや確かに少しはしていたのかもしれない。
けれどそんなか細い息では到底体中には酸素が回らない。普通人間は生きているうちは呼吸を続ける。
生きるためにそれは絶対なのに…。
肩を揺さぶり何とか顔を上げる。
そうすればようやくその目は"現実"を映した。
遥「清水せんぱッッ…んっゴホッ...ヴ...ゲホッゴホ…ゴホッ...」
そこでようやく体内に酸素が足りていないことを脳が理解したらしく激しく咳き込む。
誠「おい,なにがどうなってこうなった…ちゃんと説明しろ」
未だ咳き込んでいる遥の背を撫でながら3人の方を向く。そりゃまじかで見ない限り分からないよね…。
秋「いやぁ僕もよくわかんないよ~。なんか変な息遣いが聞こえたと思ったら遥,息してなかったからさ~ほんと焦ったよ~」
誠「息?森山ってMなわけ?」
遥「ちがっ…ゲホ,ガハッ…」
零「違うって」
まだ咳き込んでるのに喋ろうとするなんて余程自分はMじゃないって言いたかったみたい…。
優「じゃあ無意識?でもそんなこ…」
«ベチャッ»
なにか,吐いたような音とともに僕の横が真っ赤に染まった。そしてさすっていた背中が下へと落ちる。
遥「はぁ,はぁ…ゲホ…はぁ……すみません」
床に女の子座りのように力なく座り込み右手で床に手を付き,左手で口を抑える。
とても弱く紡がれた言葉は多分吐いたことにより迷惑をかけたと思っての謝罪。
床は赤い液体が広がっており,抑えた手元からはポタポタと赤色が落ちてくる。
この時僕らは初めてこの子が死ぬんだと実感した。
書類を信じていなかった訳では無い。ただ僕らの見ていた遥の姿は確かに弱々しかったが死ぬようには見えなかったんだ。
優「って固まってる場合じゃなかった。大丈夫かい森山くん。零,ここに置いてるタオル持ってきてくれないか?」
零「…わかった」
遥「…すみません。やっと落ち着きました」
誠「飲み差しで悪いが薬飲むだろ…。ここ,水置いとく」
遥「ありがとうございます」
2階の奥にあるソファに零ちゃんのお昼寝用の掛け布団が置いてある。それを取りに上がる。
分かってても目の前であーゆーの見ちゃうと結構くるな…。あの子は面白い。あのこの周りはいつも何かがおこる。
暇を持て余している僕らにとっては最高の"玩具"。
布団を取り階段を降りる。
床の血はもう拭き取られておりここのカウンター奥にある洗面台で遥が血を洗い流していた。
帰ってきた遥の顔はやはり人形のように白かった。
薬をポケットから取り出し水で流し込む。
ペットボトルを置いてふーっと息をはいた遥に布団をかける。きっと自身では気づいてはいないんだろうけどさっきから体は寒さに震えている。
遥「あの…これは」
秋「ん?お昼寝用掛け布団だよ~」
遥「お昼寝?」
まるで犬のようにその毛布に鼻を近ずけ匂いを嗅ぐ姿に思わず笑いそうになる。
遥「…西井先輩の」
零「臭うのか?」
遥「いや,別に臭いとかじゃないですよ?なんかこう言ったらすっごく変態ぽくなっちゃうんですけど…」
零「?」
遥「西井先輩って甘く香りがしません?香水とかじゃなくて…体臭?…なんか変態ぽいな」
途中まで普通に話してたのに急に落ち込んだような顔をした。零ちゃんは自分の服や体を匂ってる。
マコちゃんに「俺臭う?」とまで聞いている。すーちゃんが「大丈夫,変な匂いなんてしてないから」と安心させるように言うけどどこか不安みたい。
遥「…あっ,柿原先輩にこれを返そうと思って」
優「ん?あぁブレザーか…」
遥「長い間お借りしてすみませんでした」
優「別に大丈夫だよ?」
やっと雰囲気が普通に戻ってきた所で僕が疑問に思っていたことを遥に問いかけた。
秋「ねぇ遥…なんで僕との関係を壊したの?あの関係はそこそこ遥にとって都合のいい,心地いい関係だと思ってたんだけどさ~」
そう言えば一瞬驚いたような顔をしたかと思えば目を細めて口を開いたんだ…
遥「心地よかったからですよ…。そう感じてしまったからすぐに壊そうと思ったんです」
と微かに笑った。
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