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マフラー
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キミに触れたい、キミを抱きしめたい。
大好きで、大切で...だからこそ触れられない。
この思いはキミに告げられること無く、俺の中に閉じ込められる。
愛してるなんて、言えないよ...。
「雪や!!」
白くなってる景色に興奮して、子どものように駆け出す。
滑って転ばないかな?なんて心配しながら、嬉しそうな洸介を見て笑みが零れた。
雪のせいか、周りに人目は無い。
雪玉が飛んでくる。
その先には悪戯っ子のように笑う洸介。
白い雪に灯りがキラキラと反射して、その中で笑う洸介は綺麗だなって思う。
「洸ちゃん、風邪ひくよ」
「大丈夫やって!滅多に無いんやから、楽しまな」
どちらかと言えばクールと思われがちな洸介だが、楽しい事は好きで、やるからには楽しみたいってタイプ。
でもそれを知ってるのは一部の人だけ。
心を許した人の前でしか出さない。
そんな姿を見られる事は嬉しい事なんだけど...流石に風邪ひいたら大変。
「...クシュンッ」
「ほら、寒いんじゃん」
突然のくしゃみに、仕方ないので、俺のマフラーを首に巻いてあげる。
ありがとう...と、小さい声が聞こえた。
大人しくなった洸介の手を掴み家路へと向かう。
雪に触れてた手は冷たくなっていた。
「手...恥ずいんやけど」
「ん?あ、ごめんごめん!洸ちゃん子どもみたいだったから」
言われて無意識に手を繋いでいた事に気づく。
「子どもって...失礼やなぁ。立派な大人の男ですぅ!ほんま、名瀬は面倒見がええって言うか...過保護って言うか...」
プリプリする姿は、それこそ子どもみたいで可愛かった。
抱きしめたい衝動に駆られるが、理性がそれを止めた。
この気持ちは洸介には絶対に秘密だ。
バレたらきっと離れていく。
心を許して笑顔を向けてくれる洸介を傷つけたくない。
拒絶されるのが、怖い...。
公園を出て、二人別々の道を歩く。
じゃあねって手を振って歩き出した洸介が見えなくなるまで見送った。
一気に寒さが増して、足早に家路へ急いだ。
数日後、事務所で洸介を見かけた。
声をかけ近寄ると、嬉しそうに笑う。
今日はコンサートの打ち合わせだと言う洸介は、話の途中で声を上げた。
「あ!忘れんうちに...」
そう言って渡されたのは、雪の日に貸したマフラー。
「ありがとな。洗濯とかよう分からへんから、そのままやけど」
暫く他愛のない話をしていたが、スタッフに呼ばれて会議室へと向かう洸介。
そのままだと言うマフラーは、確かに洸介の匂いがしていた。
帰り道、マフラーを巻いて歩いた。
洸介の匂いに包まれて、近くにいるような錯覚をおこす。
周りは知らない他人ばかりなのに。
ーあぁ、俺はどれだけ洸介が好きなんだろう。
あの笑顔が曇らないように、見守っていきたい。
洸介の一番の親友でいられるように...。
信頼を向ける瞳は、俺だけのもの。
この独占欲は、とても汚い俺の欲望だ。
見守る俺が、一番汚れてる...。
ふと見れば、また雪がチラついている。
はしゃぐ洸介を思い出し、苦笑した。
今日の帰り道は寒くないかな?
少し、心配。
マフラーのように洸介を包むことができたらいいのに。
俺の思いは、誰にも知られず雪のように溶けて消えていく。
*****
某アイドルの曲を聴いて思い浮かんだ小説です。
名瀬の片思い時の出来事です。
勿論洸介はきっと、名瀬からマフラー借りてドキドキだったはず。
今回で短編はお休みします。
長編を考えてますので、連載の際にはよろしくお願いします!
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