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「鶴見にとられちまうと思ったら、すっげー悔しくなってさ。弟が産まれて母親を奪われたお兄ちゃんの気分みたいな。そんな感じ」
「冗談、だよな?」
「本気だし。証拠見せてやろっか」
健太は俺のアゴをつかみ、強引に引き寄せてくる。
「オレにキスしていいよ。凛也」
唇の寸前で選択肢を与える健太に鶴見のような強引さはない。
──来たいなら来ればいい。
無慈悲なほど自由な選択肢。
「その代わり、付き合え」
頭の片隅では分かっていた。
こんなのダメに決まっている。
昨日、鶴見に抱かれたばかりなのに、朝には違う唇を自ら求めるなんて──。
分かっていた、はずなのに。
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