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274 “ちゃんとしなさい”
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◆ ◆ ◆
その日は教室に戻る気になれなくて、昼休みが始まる前に早退することにした。
サボりなのかもしれないが、自分でもどうなのか分からない。
演技にしては身体がやけにだるい。全身がズブ濡れになったかのように重い。
心の片隅には、健太にも鶴見にも会うことなく、さっさと帰りたい気持ちもあった。
どっちだっていい。
なにもかも忘れられるぐらいの深い眠りに早くつきたい。
やっとの思いで自宅にたどりつき、ドアを開けた瞬間、俺の目は玄関先に散らばっている靴を確認していた。
無意識のうちに身についてしまったクセだ。
弟たちの黒ずんだスニーカーや、父さんが履きつぶした革靴に、ホッとする。
なにもかも、昨日の朝と同じだ。無くなっているものは一つもない。
しかし、
「──凛也」
呼ばれた弾みでハッと見開いた俺の目は、きっちりとそろえられたハイヒールを視界の隅に捉えてしまった。
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