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「──凛くん」
彼のほうから差し伸べられる手は、俺の鼻先で傘のようにパッと開いた。
攻撃ではなく、目頭からとめどなくあふれていくものを受け止めるために。
「だいすきだよ」
頬の輪郭を再びなぞりだした鶴見は、やっぱり俺を嫌っていなかった。
何度ねじ曲げようとしたって、何度確認したって、変わらない。
「すき」
指を絡ませるように涙をすくい取って同じことをひたすら繰り返す。
「……っ」
もはや、暴力なんてなんの意味もない。
「だいすき」
「……分かっ……た……」
「好き」
「……分かったって……」
「すき」
「……もう、いい。もうやめてくれ……、もう分かった。分かったから、……やめてくれ……」
加害者は俺のほうなのに、立場はいつの間にか逆転していた。
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