アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
376 キミの名残り
-
◆ ◆ ◆
鶴見の部屋へ行くしかなかった。
健太からあずかった茶封筒を片手に、エレベーターへ乗り込む。
カードキーをかざすと階を入力しなくても勝手に動き出す高性能っぷり。緊張のせいか自覚できるぐらいに手が震えていた。
おまけに、地べたから天空へと一気に吸い上げられるのだから息苦しくてしょうがない。刻々とカウントアップされていく数字はまるで心臓の鼓動を数えているかのよう。
エレベーターのドアはツヤツヤと黒光りしており、背中を丸める俺の臆病な姿をはっきりと映している。
──たまったプリントを届ける。
口実はそうだが、目的は違う。
あいつに会い、謝る。
そんなシンプルなことをなぜ二週間もためらっていたのだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
376 / 631