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振り下ろされる衝撃は、俺の身体をつたい、冷たい壁にぶつかり、どこにも吸収されることはなく身体へと戻ってくる。腹と背、二重にダメージをくらっているようで辛い。
痛みが肉を越え、骨にまで伝わる。
「……ぐ! うッ……」
だが、殴られるにもコツがある。むやみに声を出したり、助けを求めたりすれば、相手の思うつぼだ。
痛みを噛み殺しながら、布越しに犯人の顔を拝んでやろうと試みた。
しかし、いくら頭を動かしても、目をこらしても、ぼやけている。鍵穴をのぞくみたいだ。まったく見えない。
──イマニミテロヨ。オマエラ、ゼッタイコロス。
痛みと怒りで、もはや理性は吹っ飛んでいた。
とにかく、このまま一方的にやられっぱなしなのは悔しい。
でたらめに足をバタつかせる。どこかに当たったような感触はしたものの、ムダだった。
まるでボールのように頭をわしづかみにされ、床めがけて叩き付けられる。手をつくことは許されず、額が割れるような衝撃をまともにくらった。
「……っ」
脳まで痺れるような痛みは、許容範囲を超えていたらしい。
数秒の間、ほんとうに意識が飛んでいた。
鶴見の袖をまくり、顔面が真っ赤になるまでハンカチで涙をぬぐってやる白昼夢を見た。
ふたたび背中をぶたれた痛みで我へと返ったときには、相変わらず床に突っ伏したままの自分を恨みたくなった。
奇襲さえかけられなかったら、こんなやつら秒でボコボコにできたのに──。
一度や二度、負けるのはいい。
負けっぱなしはただの恥でしかない。
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