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「つーか、健太、さっきからお菓子食い過ぎだぞ。夕飯食えなくなるぞ」
「だって弁当が足りなかったんだもーん」
一つ年下の健太のカノジョはとても健気だ。よっぽど愛しているのだろう。コイツのために毎日、手作りのお弁当を作ってくる。
しょうが焼き、ハンバーグ、野菜肉巻き、チンジャオロース、酢豚などなど……。
彼の好きな肉を欠かさない上で、色どりも赤黄色緑とバランス良い。
俺も料理をするから一目見れば分かる。
色味のバランスのとれたメニューは、栄養にも偏りが無い。
相手のことを相当考えて、真心こめて作っていることだろう。
だが、育ち盛りという名の無限の胃袋を持つ健太には、彼女の用意する弁当箱は小さすぎるのだ。手のひらぐらいのちんまりサイズ。
主食となるおにぎりもコンビニサイズのを一つだけ。
「味付けも薄くてさぁ。がんばって作ってくれてんのは分かるけど、オレの好み分かってねぇのな。物足りなくて」
「お前の胃袋がバカすぎるだけだろ」
「あとなんか絶対ブロッコリー入れてくるしっ!」
それが俺の差し金だということを健太は知らない。
実は三週間、カノジョが震えながら俺にたずねてきたのだ。彼の好きな食べ物は、肉の他になにがあるだろう、って。
俺は“親切”で、彼の最も嫌いな“ブロッコリー”と答えた。
ありがとうと微笑んだカノジョの目に浮かんでいたキラキラとした光の粒が、心の底から憎らしかった。
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