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まるで糸が切れたかのように、それっきり新しい会話が始まらなかった。
俺も健太もなにか話さなくてはと考えているのに、ふわふわとうわの空。
彼はしきりに左耳のあたりをいじっている。先週空けたばかりの穴が気になるらしい。カノジョとおそろいだという銀色のフープピアス。
──些細な切なさをあげればキリがない。
妙な沈黙がやけに重苦しくて、面倒なことを口走ってしまわないように夕飯づくりに取りかかることにした。
いちいち着替えるのは億劫で制服の上からエプロンをしてしまうと、俺の回路は切り替わる。これから腹を空かせて帰ってくる弟たちのために腕によりをかけなければならない。
さっきまでの下心がさっぱりと洗い流されていくよう。
「そろそろ帰るわ」
だが、健太のほうはよそよそしいままだった。
いつもなら誘わなくたって居座って夕飯を食べていくのに、ポップコーンのカスをテキトーにはらうなりカバンを掴んだ。
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