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もう二度と、俺は鶴見を離さない。放してやるものか。
「ご、めん、な……」
「り……っ!?」
そんな意志を裏切っていくみたいに、意識は、体の力は、どんどん薄れ、弱くなっていく。
「……やだっ! り……くんっ! りん……!?」
──鶴見。
「やあああああっ! 凛くんッ!!」
気を失ってしまう寸前、俺はずっと握りしめていた刃から手を放した。
とっておきのマジックの種明かしをするみたいに。
右手で握りしめていただけのナイフは、乾いた音を立てて床へと落ちる。
俺の体よりも先に。
その刃は血まみれだったが、切ったのは手のひらの数十センチだけ。実質、たいした切れ味ではなかった。さすが、ただの果物ナイフ。
鶴見は腰を抜かし、安堵の涙を流したことだろう。
早合点しすぎるコイツはきっと、俺の腹を刺してしまったと思い込んだに違いないから──。
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