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兎赤・クロ月【嘘も程々に】※年齢操作アリ、微研赤
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「じゃ、だんどり通りよろしくな!」
「…ホントにいいんですか?」
「俺たち責任取らねぇからな。」
【嘘も程々に】
大学からの、帰り道。
近くのコンビニで、木兎さんが好きそうなスイーツと、俺が好きなアイスを買って帰る。
今日は特別な日でもなんでもないが、なんかそういう気分なのだ。
「木兎さん、喜ぶかな?」
頭の中には、抱きついてくる愛しいあの人の姿が思い浮かぶ。
「早く帰ろ。」
そのまま俺は、スキップしそうな勢いで日が落ちゆく家路を急いだ。
「ただいま帰りました……って、どうしたんですか?みんなおそろいで。」
マンションの自分の部屋に帰り、リビングへ行くと木兎さんと黒尾さん、そして月島の姿が……
木兎さんは一緒に住んでいるから居ても当たり前なのだが、問題はそのほかの2人だ。
「赤葦……真面目に聞いて欲しい……」
オレ、ツッキーのことが好きになった。
その一言が、重く響く。
俺は思わず、持っていたコンビニの袋を落としてしまった……形が崩れてなきゃいいけどな、などと、的外れなことを考えてしまう。
「そう……ですか。」
「だから、赤葦……ごめんけど「もうそれ以上は…」……すまん……。」
俺は木兎さんの言葉を遮る。
どうせ別れろ、とか言うつもりだろう。
あぁ、でも、
「黒尾さんは、それでいいんですか?」
「………」
何も答えない……もう……
「意味がわからない………」
俺は、その場に座り込む。
ダメだ、泣きそう……
そう思ったとき……
「「ドッキリ、大成功ー!!」」
その場に似つかわしくない、明るい声が響く。
あ、そうか。今日はエイプリルフールか。
でも、俺の心は落ち込んだまま。
「ごめんな?赤葦。」
目の前の木兎さんと黒尾さんは、ヘラヘラ笑っている。月島も、笑っていた。
「ッ、あ、」
ダメだ、と思った時には遅くて、
ボロボロと涙が溢れ出てくる。止まらない。
「もう……嫌い!大嫌い!!」
俺は、その場から逃げた。
玄関を出る時に、靴を履き忘れたけど、そのまま走って外に出る。
「ちょ、おい!京治!!」
「来るな!」
泣きながら、追いかけてくる3人から一生懸命逃げる。
エレベーターなんか、待ってる暇はない。
俺は、非常階段を素早く降りて、マンションの駐車場から道路へと出る。
すると、
「……どうしたの?京治…」
「孤爪……」
偶然、近くに住んでいる孤爪研磨が、通りかかる。
俺は、思わず孤爪に抱きつく。
すると、そこにちょっと遅れて木兎さん達が降りてきた。
「クロ……どういう状況?」
「……ちょっと、な。」
「…京治、大丈夫?」
孤爪は、小さな身体で俺をまるで守るようにしっかり抱きしめてくれる。
「とりあえず…京治はおれが連れて帰る。」
「ッな、勝手に決めんなよ!」
「この状態の京治を、アンタに渡したら、おれが後悔する。」
どうせ3人でいじめたんでしょ?
自分が受けた時のことも考えてあげてよね。
「大丈夫?立てる?京治。」
「…うん、」
俺はフラフラと立ち上がり、孤爪に肩を預ける。
「じゃ、ちゃんと反省しといてね。ま、おれはこのまま返す気は無いけど。」
一度逃がした魚は、大きかったって後悔するんだね。
孤爪の声が、夕焼け色の道路に響く。
俺はそこで、意識を失った。
意識を失った京治を、俺の家に連れて帰る。
ちょっと重かったけど、まぁ、持てないくらいじゃなかった。
とりあえず、ベッドに寝かせ、足を拭いて傷の手当をする。途中で石を踏んだりしたのだろうか。血が出ていて、とても痛々しかった。
「ぼくとさ、ごめんなさい…ぼくと、さん…」
「どうして……京治が謝るの?」
意識を失ってもなお、木兎さんの名前を呼び続ける京治に、同情する。
「オレに、乗り換えてもいいんだよ?」
「それは、流石に怒られそうだなぁ〜……」
「……起きてたの、京治。」
「ごめんね、今起きた。」
何時?と、京治は聞いてくる。
「さっきからあんま経ってないよ。7時くらい。」
「そっかぁ、」
どうしようかな、と困ったように笑って、どうせ木兎さんの所に戻るのだろう。
「ねぇ、」
「ん、何?」
何があったか、聞いていい?
そして、あわよくば……なんてね。
「あのね、嘘、つかれたんだ。」
辿々しい口調で、おれに話してくれる。
今日がエイプリルフールって、知らなかったんだ。
だから、木兎さんが月島のこと好きって言った時、しょうがないか、って、思っちゃった。
でもね、嘘って言われて、嬉しかったけど、おれのきもちで、遊んで欲しくなかった……
言いながら、段々泣きそうになってくる京治に、胸が締め付けられる。
でも、この感情は、捨てなきゃいけない。
「だって、木兎さん。」
「…え?」
「実はね、」
おれ、電話かけてたんだ。
そう言うと、京治は絶望したような目で、おれを見る。
そんな目で見ないでよ。苦しいよ。
「ごめんね。でも、これが京治のためだから。」
だから、早くお家におかえり?
「ッ、」
京治は、急いでベッドを下りる。でも、
「いたぃ……!」
あの足で歩くのは、とても痛いだろう。そして、
「京治!!!」
「すぐ外にいたの……きも……」
どうやら木兎さんは、俺ん家の玄関で待機していたのだろう。ホントに気持ち悪い……
「早く連れて帰って。」
「……ごめんな、孤爪。」
木兎さんが、申し訳なさそうに謝ってくる。
そんなのいいから、早くここから出ていってほしい。俺にとっては、今の状況は地獄でしかない。
「京治、おいで?」
「………ッ、自分で行けます……!」
「嘘つけ。」
木兎さんは、無理矢理京治を抱き上げる。
そして、そのまま抱きしめ、玄関へ向かう。
流石の京治も、観念したのか、大人しく抱かれたまま。
「ごめんね、孤爪。ありがとう。」
「いいよ、ちゃんと仲直りしなね?」
「……うん。」
2人は、帰っていく。
残されたのは、おれ一人。
「あーあ、辛いなぁ……」
急に温もりのなくなった部屋で、おれの呟きは溶けた。
帰り道。木兎さんがぽつりという。
「ごめんな、 」
「……何がですか?」
嘘ついたこと?
俺だけ仲間はずれだったこと?
それとも……
「……ほんとに、他に好きな人がいるなら、遠慮はいりませんから。」
「…そんな訳ない。オレには、お前だけだよ。」
「嘘だ!じゃ、なんであんなこと……」
「それは、お前からの愛を確かめたかったから。」
淡々と、木兎さんは話してくれる。
最近俺が冷たくて、好きって、言われてなかったらしい。
俺には、そんな自覚なかった……
分かってくれていると、思っていた。
「だから、試すようなことして、ごめんな?」
そういった木兎さんは、どこか怖がっているように見えた。
「ね、木兎さん……」
好き。大好き。愛してる。
そう言ったら、木兎さんが涙目になって、こっちを見る。
「さっき、大嫌いって言ってごめんなさい……」
「…うん、俺もごめんね。」
愛してる。
その言葉が、嬉しくて、嬉しくて……
帰り道が、少し、明るくなった気がした。
後日、黒尾さんと月島から謝られた俺は、2人からケーキを奢ってもらった。
そして、孤爪にはアップルパイをあげた。
おしまい。
『あとがき』
はい、ありがとうございました。
これからは、長編に加え、私の息抜き兎赤が増えていくと思います。
どーでもいい話ですが、作者はエイプリルフールに、友達から質問を正午すぎから受付け、あえて本当のことを言って遊んでました。
エイプリルフールの嘘が通じるのは、正午まで、という説があるのを、ご存知でしょうか?
貴方の身近にこういう人がいたら、騙されないでくださいね?
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