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微兎赤【サクラサク、コノヒ】
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貴方と、戦えてよかった。
【サクラサク、コノヒ】
思えば、中学生3年生。
都内の高校の大会を見に行った時、当時梟谷高校1年生だった貴方に、一目惚れしました。
まるで飛んでいるようなジャンプに、力強く、でもとても丁寧なスパイク。
その全てが、俺のなかで貴方にトスをあげたいと、騒いだ。
その時、貴方のあとを追うことを決意しました。
まず、梟谷高校の場所を調べ、そこの募集定員などを調べたり……そして、たくさん勉強して、徹夜して、でも、バレーも頑張って……
とても大変だったけど、とても楽しみでした。
あなたの隣に立つことが、とても楽しみでした。
俺は、その一心で、
試験を受け、見事合格しました。
とても嬉しかった。
あなたにトスをあげることが出来る。
そして、春。
貴方と、この体育館で出会いました。
その時の貴方は、とても面白くて、あの試合の人と同じだなんて、信じられないくらいメンタルも弱くて、浮き沈み激しい……
でも、そんな貴方もとても好きで、俺は、毎日ワクワクした気分で、練習に参加しました。
そして、練習試合。
正セッターが怪我で、その時俺が、初めて貴方にトスをあげた。
ふわりと待ったボールを、貴方が打つ。
とても、輝いて見えた。
その時の感動は、今でも忘れません。
その時から、貴方との練習が始まった。
とても嬉しかった。
でも、そのぶん、キツいことも多くなっていった。
そんな貴方が、俺に一言。
『大丈夫。お前は、俺のセッターだ。』
だから、焦るな。大丈夫。
その一言に、どれだけ救われたか。
たくさんの試合があって、その度に、たくさん笑って、たくさん泣いた。
そして、1年の月日が経ち、俺は2年生。貴方は3年生になった。
そして、貴方が主将。俺が副主将……
新チームで上手くやって行けるか不安だったけど、いつも俺のことを励ましてくれたのは、貴方だった。
でも、時々、いや、ほとんど主将の仕事は俺がしてたけど、それでも良かった。
貴方に必要とされていたから。
嬉しかった。
そして、沢山の練習を重ね、迎えた全国大会。
惜しいところまで行ったけど、結局負けてしまった。
悔しくて、涙が出た。
でも、それよりも悔しかったのは、貴方達3年生だったと思う。
でも、言えなかった。
『来年、貴方達の分まで頑張ります。』
なんて……
でも、そんな俺に気づいてか気づかなくてか、貴方は、俺に一言。
『任せたぞ。』
その言葉が、俺にどんなに勇気をくれて、そして同時に絶望をあたえたか………
それから数ヶ月、俺はずっと、卒業という言葉に怯えながら暮らしていた。
貴方が、俺のバレーからいなくなってしまう。
悲しくて、寂しくて、布団の中で声も出さずに泣いたこともあった。
でも、別れは必ず来るもの。
あれよあれよと、卒業式。
一人一人に、卒業証書が手渡され………
俺は、ボロボロ泣いてしまって、後半よく覚えていなかった。
でも、終わる頃には涙は止まった。
だって、貴方に、こんな顔を見せてしまうのは嫌だから。
俺は、最後。貴方を見送る時、微笑んだ。
それを見た貴方も微笑んだ。
卒業式後、体育館でバレー部で集まり、最後の挨拶をした。
一人一人が、思いを伝えていく中、貴方だけが、強く、『頑張れよ』と言った。
簡単すぎる、やもっと無いのか、という声も上がったが、俺には、充分伝わった。
誰もいなくなった体育館で、俺と貴方が向き合う。
『寂しい?赤葦。』
そんな当たり前のことを言う貴方に、俺は言ってやった。
『寂しいですよ。でも、』
貴方と、戦えてよかった。
涙が溢れ出てくる俺の顔を、貴方は珍しく持っていたハンカチで優しく拭いてくれる。
俺は、今でもあの時のことを忘れない。
それから、1年。
「来てやりましたよ!……貴方のセッターが。」
俺は、もう一度、貴方を飛ばせる。
そして、また、2人で………最高のコンビになりましょう。
END
4月5日 兎赤の日に。
ありがとうございました!!!
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