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兎赤・クロ月・及影 『約束はベッドの上で』
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「本当に良かったんデスか?」
お姉様、嫉妬深いですよ?
その言葉に、オレは
「オレほどじゃねぇだろ………」
と返した。
『約束はベッドの上で』
恋は、情熱的に、且つ戦略的に。
それがオレのモットーだ。
でも、今まで情熱的になったことは多々あるが、戦略的に、コイツが欲しいと思ったのはケイジが初めてだった。
だからこそ、逃がしたくない。
オレだけのモノにしたい。
誰にも見せたくない、触らせたくない。
自分でも驚くくらいの独占欲だ。
だから、オレは捕らえた獲物をさらに逃がさないように、妹達と協力することにした。
「で、ワタシにして欲しいことってなんですか?」
「実は………アイツの好きなものとか趣味とか子供の頃の話とか初めて付き合った人とか好きなタイプとか「いや長いデス!」……とりあえずケイジのことについて知っていることを全部教えろ……」
「そこまで行くともはやストーカーデスね。……じゃあ、取り引きしましょう?」
「何とだ?」
「クロオ様のことについて、教えてくださる?」
全て。
目の前の姫は、妖しく笑う。
まるで、悪魔のように。
「やっぱり、オレたち」
似てんな……
つくづく、そう思う。
****
数時間後
部屋に戻ったボクトは、未だ眠り続けているケイジに近づき、ベッドの端に座る。
そして、ぬいぐるみを抱きしめて眠っているケイジの頭をそっと撫で、魔法を解く。
この魔法は意外と厄介で、対象を緩やかな眠りに誘うが、魔法を解いてから起きるまで、どれくらいの時間がかかるか分からない。
「……早く起きないかなぁ〜」
話したいことが、沢山ある。
してあげたいことも、して欲しいことも。
たくさん甘やかしてあげるから……
「その目を開けて?……お姫様。」
額に、優しくキスをしたら、ケイジが満足そうに微笑んだ気がした。
****
小さな頃から、1人で遊ぶのが好きだった。
習い事から逃げ出して、大きな城の、秘密の場所。
薔薇の花から少し右、棘がない場所から入って、小道を真っ直ぐ……
森の中の、ぽっかり開いた小さな丘。
そこに、持ってきたシーツを敷いて、木の屋根でおおう。
私と、ドラゴンちゃんしか知らない………私だけの、自慢の場所。
なのに、ある時、私が1人でそこに行った時、見知らぬ男の子が立っていた。
「……!誰?………」
「………あーあ……ケイちゃんかと思ったのに。」
その男の子は、私の秘密基地を、いとも簡単に壊していった。
倒された屋根。破かれたシーツ。
泣きじゃくる私の前で、男の子はこう言い放った。
「…ケイちゃんがここ、気に入ってくれるかな〜……」
私の目の前は真っ暗になった。
場面は暗転して、ここはお城の私の部屋。
ピアノの稽古をしていた時……
「……っふぅ………」
初めて楽譜を弾ききった時、先生に褒めてもらおうと後ろを向いた。
「……………」
先生は、そこに居なかった。
先生は……トビオを見に行っていた。
そのあとだ。
『天才少女、ピアノを完璧にこなす彼女は王国の第3王女!』
という見出しのビラが撒かれていたのは。
またまた舞台は暗転。
目の前には、大好きなお父様とお母様がいた。
「ケイジ……」
そうだった。これは私が………
「お願いだ。……あの妹たちを守るため、……」
騎士になってくれ。
私の人生は、妹達優先で。
私の周りの人達も、妹達のことが、ことの方が大事で………。
私は、この時やっと、私の運命を受けいれた。
『妹達よりも劣っていて、戦うことしか出来ない姉。』
そんな時、受け入れてくれて。
私のことを見つめて、初めて。
「綺麗だよ……」
彼が言った言葉は、私の心に光を指した。
でも、だからこそ、妹達に渡したくない。
私だけのものだ。
なのに、神様は、そう思うことしか許してくれないのでしょうか?
やっぱり、私は………
****
「ッ、!」
急に目が冴えて、現実世界に引き戻された。
目の前には服の上からでも分かるくらい逞しい胸。
私は、いつの間にか帰ってきたボクト様の腕に抱かれていたようだ。
でも、ボクト様は見た目とは裏腹の、可愛い寝息を立てて眠っていた。
幼い寝顔、綺麗な金色の瞳が閉じられているのを初めて見た。
それと同時に、今の所は私しか知らないだろう寝顔を、妹達が見ることに、とてつもない悲しみを感じた。
もしかしたら、もう、見ているのかもしれない。
それなら、いっその事。
私から手を離した方が、私の受けるダメージが少なくなるかもしれない。
「……もぅ……分かんなぃッ!……ふぅッ……うぇ……」
溢れ出す涙は、一向に止まらない。
漏れそうになる声は、手を噛んで抑える。
目の前の彼に、分からないように。
****
鼻をすする音がする。
薄く漏れる、荒い吐息も。
何かをこする、布の音も。
目の前の彼女から、悲しい音が、沢山してくる。
今、起きなきゃ。
今、甘やかして、何も心配いらないよって、撫でてあげなきゃ。
攫ってきた意味が、無くなるじゃないか。
ふわっと身体が浮遊感に襲われた。
目をキュッと閉じて、恐る恐る開いていく。
そこには、優しい笑みを浮かべたボクト様がいた。
私は、急に起き上がってベッドに座ったボクト様の膝の上に、向かい合うように座らされた。
私は思わず、顔を隠す。
「…ケイジが抱え込んでいるもの、オレにはわかんない。けど……」
ケイジが泣いてるのは、悲しい。
優しく手を上から握られ、ゆっくりと手をどかすと、優しい蜂蜜みたいに蕩けた綺麗な瞳と目が合った。
「オレにも、分けて?その悲しみを。」
ボクト様は、優しくキスをしてくれた。
私はゆっくりと、口を開く。
「あなたが……どこかにいってしまうの……やだっ……ごめんなさい……めんどくさくて……ごめんなさい……」
ゆっくりと私の言葉を聞きながら、ボクト様は、涙を拭ってくれる。
「ねぇ、ケイジ。オレは今、とっても嬉しい………」
キミから、こんなにも求められているなんて。
その言葉に、また、涙が溢れてくる。
「いいの?……貴方のことが、……」
そのあとの言葉は言えなかった。
言ってしまうのが怖かった。
口を閉ざした私を見て、ボクト様がひとつの提案をしてくる。
「じゃあさ、ケイジ。オレがキミのことを裏切ったら、オレを殺して?」
耳元で、囁くように言ったその言葉は、私にとって、忘れられない言葉になった。
「…はい……じゃあ、わたしのことも、殺してください……」
貴方から、逃げ出したら。
ベッドの上で、2人は抱きしめ合う。
2人だけの空間が、そこにはあった。
……To be continued
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