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兎赤【俺を救いあげたのは?】
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「アンタなんか………産まなきゃよかった!!」
ごめんなさい……
生まれてきて、生きていて……
「ごめん…なさい……」
【俺を救いあげたのは?】
バシ、バシ、
「あんたなんか……あんたなんか!!」
「………」
どこか他人のように、自分が叩かれている音を聞く。
痛いのは、嫌だ。
でも、もう慣れてしまった。
窓の外から聞こえる、楽しそうな声………
いいなぁ……
どれくらい叩かれていただろう。
ガチャ……
「ただいま……」
「おかえりなさい♡貴方♡」
母は、今まで聞いていたのとは打って変わって、甘い声を出して父に腕を絡ませる。
俺は、なるべく2人の視界に入らないよう、押し入れに入る。
この真っ暗な押し入れが、俺の部屋であり、唯一の俺の居場所でもある。
今からあの人たちは、夜でもないのに獣になるのだろう。
艶かしい雰囲気から逃げるように俺は耳を塞いで目を閉じる。
目を覚ましたら、この世界がなくなっていることを信じて………
「こら、どうした?こんなところで眠って、風邪ひいたら困るだろう?」
これは誰の声だろう……
「……ぱぱぁ……」
目の前には、まだ、ギャンブルに依存する前の、優しい父がいた。
「おいおい、どうしたんだ。怖い夢でも見たか?」
「ふっ、うぇぇぇん!……」
俺は堰を切ったかのように泣き出してしまった。そんな俺を、父は抱き上げ抱っこして頭を撫でてくれる。久しぶりに感じる、痛くない、人の体温。
「もう、おかしく、ならないでッ……」
「それは分からないなぁ〜………」
ドス黒い声に、はっ、と目を覚ます。
「おとう、さん?」
そこは暖かい父の腕の中ではなく、寒くて、暗い押し入れだった。
目の前には、上半身裸の父が。
「さっきからぴーぴーぴーぴーうるせぇんだよ。チッ…おら!来い!!…」
押し入れから引きずり降ろされる。ドス、と膝から落ちた。痛い。
「ごめんなさっ!…ごめん、なさぃ、………」
何発も、頭を叩かれ、蹴られる。
さっきまでは、あんなに優しく撫でてくれていたのに。
何も言わずに殴る父に、後ろでタバコに火をつける母。
「根性焼き、してやるよ!」
「ッ、!?いや、やめて!!」
タバコの火が、近づいてくる。
2人の、楽しそうな笑い声が聞こえてきて……
俺は、コワレテシマッタ。
(もう、なんでもいいや………)
肌が焼ける、嫌な音がする。
痛い、熱い、痛い、熱い……
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
悲しい………
ピーンポーン………
呆けていた所に、家のチャイムがなる。
「チッ…誰だよ!ァあん!!??」
父がすごい剣幕で、玄関に行き、ドアを開ける。
「ほぅ、てめぇ、そんな口を聞けるような立場だったか?」
ドアの外に立っていたのは、綺麗な洋服を着て、銀と、黒のメッシュの髪をオールバックにした、綺麗な男の人だった。
しかも、体格がいい。
170ある父を、優に超え、上から見下ろしている。
その周りには何人かの黒い服を着た人がいて、玄関を塞いでいる。
「ひっ、ぼ、木兎さん!!」
「おい、家で子供叩いてる暇があったら、ちったァ借りた金返せよ。」
「そ、それは………」
「今日までに300万、払うって言ったよなぁ?忘れたのか!?コラァ!」
「ひ、すみません!!!!」
その人は、自分一人でどんどん家の中に入ってくる。
そして、さっさと部屋の中に逃げた父と母に目もくれず、俺の前に立つ。
頭に下ろされてくる手に、俺は条件反射で肩をびくつかせてしまう。
それに悲しそうな顔をしたその人は、俺の身体に白いジャケットを掛け、抱き上げる。
「可哀想に………痛い?」
俺がこくんと頷くと、その人は俺の父と母に向かって大声で怒鳴る。
「てめぇら!!…この子は俺が貰う。その分、100万まけてやろう。……明日の昼までに、200万、分かったな!!」
そう言い放つと、木兎さんは家の外に、俺を抱っこしたまま歩いていく。
黒い服を着た人があとをゾロゾロついてきて、怖かった。
「おい。」
俺を抱き上げた人が、低い声で呼びかける。
その声に、父を連想してしまい、俺の身体が勝手に震え出す。
「あーごめんごめん。ほら、いい子いい子。」
さっき家で怒鳴っていた人とは思えない、優しい声を出して俺の頭を撫でてくれる。
「俺の名前は木兎光太郎。……お前の名前は?」
勝手に連れてきてごめん。と、申し訳なさそうに言う木兎さんに、俺は………
「あかあし……けいじ……」
自分の名前を言う。
すると、木兎さんは
「自分の名前を言えて偉いなぁ!」
と、褒めてくれた。
あまりに嬉しくて、満たされた気持ちになって、緊張の糸が切れてしまったのだろう。
俺は、気絶するように眠りに落ちた。
****
ヤクザの組長の息子。
それだけの事で、みんな俺から逃げていく。
みんな俺から離れていく。
おかげで、俺は昔から1人だった。
周りに友達も、青春も共に過ごす仲間も、恋人も居なかった。
だから、仲間を見つけたような………
そんな気持ちになったんだ。
腕の中で眠ってしまった子供に、そっと額にキスをする。
車に乗り込み、家路を駆け抜ける。
少し行った所で、家のもんが見えてくる。
俺は急いで門をくぐり、医者の元まで連れていく。
「黒尾!!!この子を見ろ!!」
俺の大声に顔を顰めた医者こと黒尾鉄朗は、俺の腕から子供を取りあげ、慣れた手つきで診察をしていく。
「あーあ、随分と痛そうだな……骨は折れてねぇが、この火傷はずっと残るぞ。」
そう言って、黒尾は子供の身体を拭き、怪我の手当をしてくれる。
「あれなら、墨でも入れさせる。」
本人が望めばな。
そういった俺に黒尾は目を見開き、その後何時もの食えない笑みを浮かべた。
「へぇ……珍しいこともあるもんだなぁ」
俺はその笑顔がうざかったので、さっさと部屋に戻り、飯も食わずに眠りにつく。
明日になったら、沢山遊んでやろう……
この後、木兎さんの下で成長しながら次第に木兎さんに恋心を抱く赤葦くんと、日に日に可愛くなっていく赤葦くんに自分を抑えきれなくなる木兎さんの話を誰かくれ!!!
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