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時間は、ラスト6分程
パリィ…ン!と綺麗な音を立てて、最後のバリアが粉々に砕け散った
「しゃぁっ!!敵は回復してないな!?」
「してない!変わらず残り19%のままだ!!」
「よし、一旦敵から離れるぞ!」
HPが20%以下になると、これまで以上に暴れまくる
離れたところまで走って集まり、息を整えた
「画面上で見るより迫力ある暴れ方だな…あれは。」
「簡単に背後も取れないですね……」
空間の中を叫び声を上げながらグシャグシャに動き回る巨体
長い腕を振り回している為近づいて攻撃するのも難しくて
(ここからが1番時間かかる。少しずつ削るしか方法がない…でも、)
そんなことしてる暇なんて……もう残ってなくて
「強行突破しか、無いな。」
「当たって砕けろですね。いや砕けたら駄目だけど、でもそれくらいでいかないと無理です。」
「そうだな。」
ラスト19%なんて攻撃すれば直ぐに終わるのに、このIDじゃそれをするのこそが、一番難しい
(攻撃を避けて、意地でも削っていくしか…!)
「おし、行くぞ!!」
「「「はい!」」」
あまり休んでる場合じゃない
簡単な打ち合わせをして、直ぐに敵の元へ戻った
「っ、くそ、やはりタゲは無理だな…ってかもう俺たちなんて見てない!」
「チカも後ろに回った方がいい!火力と同じ動きをして何とか攻撃するんだ!」
「了解です!」
暴れるナギロスを4人で追って、微かにできた隙をついて攻撃して…そんな僕らの後ろをキョウちゃんが回復しながら付いて来てくれて
「あぁくそ、攻撃しづらい…!!」
「右手を上げたぞ!!足元注意!」
「ちぃっ、!」
動きは早くなっても、変わらずギミックはランダムに飛んでくる
「後4分!!」
「っ、!」
前にいる敵のHPは、残り12%
(削れては…いる!!)
少しずつだけど、確実にHPは減ってきている。
「左手!アサ!!」
「はいっ!」
自分を掴もうと伸びて来た手を素早く避けた
キィィィイィィ!!!!
「苛立つんじゃねぇぞナギロス!俺たちはっ、お前の思い通りにはならない!!」
左手を伸ばしたことで出来た隙に、思いっきり双剣と斧と槍の痛い攻撃が入った
「よしっ!!」
直ぐに体制を整えて、僕も一番強いスキルを放つ
「いいぞ!後8%!!」
「行ける…行けるぞ!!焦るな!」
グルンッ!とまたランダムに動き出した敵の後ろを、また諦めず張り付くように追って行った
(行ける!!)
さっきので一気に減った、このまま行けば…きっと……!
アルガさんたちの目も鋭くなっていて、ひたすら敵の動きを見て隙を狙っては攻撃を繰り返している
「もう、ちょっと…!」
もう少し…もう少し!!
HPの目盛りは確実に1つずつ1つずつ減っていて
「後2分!」
「2分!倒せるぞ!!」
残り、4%
このペースで削りきれば、倒せる
(この世界を、終わらせられる筈だ……!!)
長かったこの世界が…ついに終わる。
たくさんたくさん成長できた、この世界が。
きっとこの世界には、早くリアルに帰りたいと懸命に毎日を生きてる人たちがいて
そしてリアルには、早く帰ってきてほしいと願う人たちがいる筈だ
(終わらせ…なくちゃ、!)
僕が、僕たちが。
ガンッ!と斧の強いスキルが、またモロに当たった
「行ける…行ける行ける!!
ーーーラスト一気にやれ!!!!」
パキッと僕たちの体が、キョウちゃんの張ったバリアで包まれる
ダンッ!と地面を蹴り、近接の3人が飛び上がった
その背後から、ありったけの力を入れて無数の矢を一斉に飛ばす
「「「行っ、けぇぇぇ!!」」」
ガシャンッ!!
キィィィイィィィ!!!!
僕の矢が体に突き刺さり、3人の武器がそれぞれ体にズブリと埋まり
敵の動きがピタリと止まった
そして
パキッ
パキパキパキッ…と体がひび割れるように固くなって
パリィ……ンと無機質な音をたて、巨体が煌びやかに崩れ散った
「ぁ………、」
「やっ…た、のか……?」
「時間は……時間はどうなってる?」
みんなの視線の先、時計の針は
ーーー残すところ数十秒のところで、止まっていて
「ゃ……や、や!」
「やったぞアサー!!!!」
「わぁっ!」
がばっ!と背後から抱きつかれた
「キョ、キョウちゃん……キョウちゃんっ!!」
僕も思いっきり白い体に抱きつく
「やっ…たか……はぁぁ寿命縮んだ……」
「俺もだ……本当に、もうこりごりだな…」
チカとヨルさんがその場にガクッと座り込んだ
(やった……)
誰一人、欠けてない。
みんな…ちゃんと生きてる。
「……っ、ふぇ…ぅ、えぇ……っ、」
「なっ、アサ? 今頃怖くなったのか?もう大丈夫だって。」
苦笑しながらヨシヨシ背中を撫でてくれるキョウちゃんに、必死にコクコク頷く
「みんな、本当によく頑張った。こんなに辛く過酷な道を選んでくれて有難う。君ら無しではクリアは無かった。」
アルガさんが手を貸してチカとヨルさんを起こし、僕らの方を振り返る
「さぁ、早くここから出ようか。秀麗や皆が待っている。しっかり倒しきったと報告して、
その後は各自復活しただろうログアウトボタンをーーー」
指ですっと空中を切り、画面を表示させていた手がピタリと止まった
「………アルガ…さん……?」
「ない……」
「ぇ、?」
目を大きく見開いて、その指はカタカタ震えていて
「無いんだ…ログアウトボタンが………」
「…え? そんなまさか、」
「何言ってんだアルガ、お前探し方間違ってんじゃねぇの?システム設定の画面だぜ?」
僕たちもそれぞれ画面を出し、空中で操作して同じページを開く
「……っ、な、」
「ぇ………あれ…………、」
そこには〝ログアウト〟のボタンは無く、ただのシステムのボタンが並んでいるのみだった
「お、おいおいどういう事だ?まだ攻略してないIDがある…?」
「いや、無いな。IDのページを見ても次のIDへの指示は無い。恐らくTMと同じく、ここが最後のIDな筈だ。」
「それなら、一体どうして………」
「は、発動条件とかあるんじゃねぇのっ? ほら、例えば満月の日とかっ、」
分からない 分からない
(そん、な……っ、)
この世界が始まって、今までずっとこの最高難易度のIDをクリアするためにここまでやって来た
ひたすらに、旅をして来た
それなのに
(他に…クリアする条件が、あるってこと?)
PvEのID攻略がメインな、このゲームで……?
「うそ、だ…………」
空に浮かぶ3万人いた人口は、今や半分の1万5千人程
この世界に閉じ込められて、早1年と4ヶ月
僕たちの旅は、まだ
終わらなかったーーー
[ID編]-end-
***
第1部前半、終了です。
ここまでファンタジーとBLが9:1という割合ですいません…後半はこれを3:7に持っていくストーリーとなってます。引き続きお付き合い頂けますと幸いです。
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