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Aschenputtel:灰かぶり
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その後どうやって家に戻って来たのかは覚えていないけれど気がつくと静かで真っ暗な家の中にいた。やはりあれはシンデレラだった。そう思いたくなかった。けれど……。
その時、城の鐘が鳴った。まだ12時なのか、と自分の足の速さに驚く。客間のソファの上でただ呆然と座っているだけ。ふと、シンデレラの母君の墓が気になり庭へ出た。そこには必死でタールを落とそうとした跡が見える。
「ごめんなさい…」
震える声で呟いた。もし僕が彼を守っていたら…お母様にこんな事されなくて済んだのかな。僕は一旦部屋に戻り着替えると墓を綺麗に磨くことにした。不思議なことに、自分の涙が一雫ポタリと落ちると、そこが綺麗になっていく。
「シンデレラ…」
綺麗になったお墓の前で舞踏会での事を思い出す。きっと姫はシンデレラとすぐにでも式を挙げるだろう。きっと、もう二度とシンデレラは帰ってこないだろう。
するとそこへバタバタと足音を響かせてシンデレラが帰ってきた。僕を見るとホッとしたような表情を浮かべ抱きしめる。僕は訳がわからずついシンデレラを押しのけた。
「何するの?」
低い声。泣き腫らした酷い顔を見られたくなくて俯きがちになる。シンデレラは僕の顔を見ようとそっと綺麗な指で僕の髪を掬い上げるが、僕はその手を払った。
「やめて。」
「何その態度…僕が何かした?」
シンデレラもあんまりにもな僕の態度に段々とイラついていく。それでも僕は自分の感情を制御できずに、酷いことをたくさん言ってしまった。
「前妻の子供のくせに調子にのるな」
「ちょっと優しくしただけで懐いて気持ち悪い」
「お前なんか好きになる訳ない」
「お前ごときが気安く触るな」
思いつく限りの罵倒。なぜそんな言葉を並べるのか自分自身にも分からない。それでもそうやって酷いこと言って、シンデレラに愛想つかされて…そしたらシンデレラは……
やっぱり僕はシンデレラに幸せになってもらいたいんだ。
僕なんかといたってなれやしない。それこそ、姫様ほどのお方といなければ…
「……ごめんなさい」
きっとシンデレラの耳には届かなかったと思う。僕に対して怒りを覚えても、優しさの残る彼は僕に何かする前に部屋へ戻っていった。だから、その耳には僕の微かな声なんてきっと届かない。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさいっ…好きだよ…好きなんだ…愛しているよう………シンデレラ…」
僕はいつの間にかその場に座り込み泣き叫んでいた。
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