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Aschenputtel:灰かぶり
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翌朝、城に現れた謎の美少年を探すため再び舞踏会が開かれた。僕は早くシンデレラの中から消えようと自分から進んで舞踏会に参加した。とは言っても昨夜と同様、壁際でじっと立っているだけだけれど。
すると、そこへ昨晩よりずっと綺麗な服に身を包んだシンデレラが現れた。また姫と踊って、楽しそうにしている。不思議と胸の痛みは無かった。
「…無理すんなよ。」
その言葉に顔を上げると兄さんがいた。兄さんは悲しげな微笑みを浮かべている。
「世界でたった二人の兄弟なんだぜ?たまには、頼ってくれてもいいから」
誰にでもいいから縋りたいと、僕はそのまま兄と共に城を出た。
城からの帰り道、珍しく兄弟の会話をする。もしかしたらこの邸に来て初めてかもしれない。珍しく兄さんの顔をするものだから、僕も久し振りに甘えてしまう。
「…昨日言ったこと、気にしたのか?」
兄さんが突然申し訳なさそうに昨夜の会話について切り出した。気にしていないといえば嘘になる。いや、むしろ気にしすぎて、こうなってしまった。でもそれは、たしかに今は辛いけれど、長い目で見ればシンデレラのためになると、納得できるものになるだろう。
「ううん、ただ、…少し、今後のことを考えてただけだよ。気にしないで。」
作り笑いでも、兄さんのホッとした顔を作れるなら悪いものでもないのかな。邸に着くと、僕はまた庭の墓地へ行く。
いつだったか、シンデレラがお父様に頼んだハシバミの木が立派に育っていた。その木の枝には小鳥が並んでいる。いつもシンデレラといる鳥だ。
僕がそっと指を差し出すと、まだ幼いのが一羽、ちょこんと乗った。僕がそっと羽を撫でてやると嬉しそうにしている。親鳥と思わしき鳥は必死にバタつき僕に攻撃しようとするが、僕に害がないのがわかると静かになった。
ポタリと、撫でていた雛に水滴が落ちる。雨だろうかと上を見上げても綺麗な月が出ているだけ。すると、またポタリと今度は足元に落ちた。次第に雛がバタつく。
「誰だ…!」
振り返ると雛の声を聞きつけたシンデレラが立っていた。僕はハッとして、先ほどまでの水滴が自分の目から溢れていたことを知ると慌てて目元を拭う。
「シンデレラ…」
「…お兄様ですか…タールでも、かけに来たんですか?」
「ちがっ……」
僕は黙り込む。もうどうしていいのかわからない。そうしていると、シンデレラは僕を突き飛ばして自分の肩に飛んで来た雛を木に返してやる。
僕の方は突き飛ばされ、元々不安定だったのもありあっけなく地面の上に倒れこんだ。
「…………」
シンデレラは何も言わずに僕を一瞥するとそのまま屋敷の中へ帰っていった。
僕は結局日がうっすら顔を出すまでその場で座り込んでいた。そして翌日も舞踏会の招待状が届く事になる。
その日の夜、僕は城へは行かなかったけれど、ついにシンデレラが手がかりである靴を落として行ったらしい。その靴に足が合えばめでたく姫と結婚とのこと。今更になってそうなることが怖くなって慌てていると、僕たちの住む屋敷にも従者がやってきた。
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