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③
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始まったのは、春のことだった。
菅原を、無理矢理に自分のモノにした。
終わったのは、夏のことだった。
菅原は、オレよりも奴を選んだ。
菅原には恋人がいる。
岩泉の幼なじみで親友でもある及川の元へ。
帰っていった。元の鞘に戻っただけだ。
及川のことは承知で菅原を抱いた。
自分が及川の立ち位置に取って代わるつもりで、
本気で そう信じて始めた関係だった。
今でも輝いている。思い出にするには きらびやか過ぎる。
幸せ、というのは こういうことか、と実感出来た。
世界中が自分を祝福してくれているような。
腹の底から力が溢れてくるような。
自分が無敵のヒーローになったような。
悪いことなど起こる気がしなかった。
高揚感に包まれ、充実していた。
しかし。
勝てなかった。
及川に、負けた。
恋愛に勝ち負けというコトバは使わないのかも知れないが。
今、現在、実際に、菅原は自分の隣には居ない。
ずっとバレーボールで勝負の世界にいた。
勝てない、ということは、負けなんだ。
競って負けたんだ。
仕方がない。
悔いはあるが、認めるしかない。
及川も菅原も幸せなら、それで いーじゃねーか。
オレの幸せはオレが考えるしかねぇ。
そうアタマでは思えるものの。
欠落感を抱えながら毎日を送り、ふたつの季節を遣り過ごした。
秋の日が短くなるのを嘆き、冬の凍てつく寒さを恨んだ。1人で。
そして、また、春が来ようとしている。
その間、オレは立ち止まったままだ。
同じトコロで、同じモノを求め続けている。
……情けねぇ。
岩泉は、ギリ、と奥歯を噛み締める。
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