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④
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「お彼岸だから、ぼた餅 どうぞ」
週に2回訪問する、とある会社の営業所で集金を終えて帰ろうとした時だ。
「は?」
「今日、1人お休みしちゃって……。余り物で悪いんだけど」
年配の事務員さん(オレの母親くらいか?と岩泉は考える)が、申し訳なさそうに、しかし、是が非でも持っていけ、というように、プラスチックの小さなケースに入った餡ころ餅を岩泉に寄越す。
「え……良いんスか?貰っちゃって」
「どうぞどうぞ!所長の奢りなんだけど、余ったら持ってけ、て言ってくれるんだけど……今、健康診断前だから、ワタシ、自粛中なのよ~~」
ホホホ、と笑う その事務員さんは、……まあ確かに、たいそう ふくよかで……色々な数値が気になるんだろうな、と岩泉は気を回し、
「すんません!じゃあ、お言葉に甘えて……頂きます!」
と、営業スマイルで答える。
以前にも、缶コーヒーやクッキー……バレンタインにはチョコレート、等々 貰ったことがあるので、
抵抗なく餡ころ餅を受け取る。
どこで食おう?
その営業所を出てから考える。
支店に持って帰って1人で食う、っつーのもな……
天気も良いし、ちょうど午後のお茶の時間だし。
その辺の公園で一休みしてくか。
と、思い立つ。
公園のベンチに座り、自販機で買った缶コーヒーを
ひとくち飲み、餡ころ餅を頬張る。
お彼岸か。
実家の母が毎年 手作りしていたことを思い出す。
年寄りに持って行くせいか、やたらに甘い あんこだった。
今日びのお菓子は、どれも甘さは控えめで……この餡ころ餅も あっさりと食べやすく……。
しかし無性に、あの やたらに甘い餡ころ餅を食べたくなるのは、自分も年を取った証拠か、と岩泉は口元を弛める。
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