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⑥
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「じゃ、アタシも いらない。………ね、喉 乾いた。
何か飲も?」
『彼女』は、機嫌を取るように岩泉の腕を取り、ぐい、と胸を押しつけてきた。
薄い服を通して自分の腕に感じた柔らかさに、岩泉は思わず『彼女』の顔を見返した。
無邪気さを装う その顔の中で、瞳が妖しく揺れて
唇が思わせ振りに開いた。
誘われている、と岩泉は気づき、何故『彼女』の地元にまで のこのこ来てしまったのか、自分の迂闊さを悔いた。
それまでも幾度か、そのチームにとってのアウェイ戦を、東京近郊のスタジアムで観戦していた。
チームの ひたむきさ、泥臭さ、垢抜けなさが妙に気になって、誘われれば応援に駆けつけた。
ホームでは、スタジアム中がチームカラーに染まると言う。
応援の迫力もスゴいから!と力説され、来てしまった。
まさか、親に紹介されることはナイと思うが。
自分が軽率であったことに初めて気がついた。
岩泉にとっては、同期の1人で、好きも嫌いもなく、ただの気の合う仲間、という位置づけの『彼女』。
いつから、そんな風に思われていたのだろう。
押しつけられた部分の熱が上がってくる。
「ん?」
小首を傾げて笑う その顔が。
突如、菅原に取って変わった。
「?!」
驚いて腕を払う岩泉に、『彼女』は眉を寄せて見返してくる。
「おう………オレはアイスコーヒーが飲みてぇな……」
場を繕うように岩泉が言うと、
「えー?そこはビールって言うとこでしょー?
ノリ悪っ!」
と、『彼女』は唇を尖らせた。
菅原には似ても似つかぬ顔。
何故、ヤツを思い出したのか。
罪悪感か?……何に対する?
その頃には既に菅原は及川と付き合っていて。
岩泉は取り残された気がして。
自分の想いを持て余していた。
だが、未練がましく想い続ける自分を、岩泉は誇らしく思っても いた。
真実の愛だ、などと嘯いて。
『それ』に囚われて、『彼女』の熱さに揺れる己を戒めたのか。
哀れな、自分。
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