アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
帰り
-
「はっはっ…はっ………」
普段あまり汗をかくことは無いのに、全力で走ったせいでだらだらと滝のように汗が流れる。
エントランスで1人荒れた呼吸を整えた。
「はぁぁぁ……………」
長いため息を吐いて、恐怖で震えていた身体と気分を落ち着かせ下駄箱に向かう。
靴を履き、生徒用玄関口から外に出て学校の敷地にある駐車場を見た。すると、そこには既に江口さんが運転している車が止まっていた。スマホをつけて時間を確認するともう6時半を過ぎていて、慌てて車まで走る。
「江口さんすみません!!」
車の後部座席の扉を開けて、まず江口さんに遅れてしまった事に対しての謝罪をした。
「大丈夫ですよ。まだそんなに待ってませんから」
江口さんは、慌てている俺に優しく微笑みそのまま話しかける。
「今日の練習はどうでしたか?」
俺が車に乗ったことを確認し、江口さんは車を出す。
「……えっと………今日はあんまり練習出来なくて…」
俺は早乙女伊澄の事を思い出した。
「え、そうなんですか?珍しいですね」
俺と江口さんはミラー越しに目が合った。江口さんは少し驚いている。
それもその筈だ、自分で言うのもなんだけど俺が歌の練習をあまり出来なかったなんて事は今までで殆ど無かった。
あの男、早乙女伊澄に会ってなきゃもっと練習出来たのに………
「…まぁ、色々あって……」
俺はフロントガラスを下げて、風に当たりながら雲一つない夜空を見上げる。夜空には綺麗な月が出ていて、その綺麗な月を家に着くまでずっと眺めていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 61