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早乙女伊澄という男 10
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早乙女伊澄という男はわからない男だ。掴めないという表現も合っている様な気がする。まぁとにかく何を考えているのかわからない男なのだ。
現に今もそうなのだ。俺は早乙女にお姫様抱っこをされたまま職員室に行き、保健室の鍵を貰って、足首の手当をした。因みに手当をしたのは早乙女だ。何故出来るのか聞いたところ、医者を目指しているらしい。どうりで出際がいいわけだ。と納得した。
まあ、そんなこんなで保健室のベッドに座っている俺だが、何故か隣に早乙女が居るのだ。言っておくが、早乙女はベッドに座っている訳ではない。ベッドの横に置いてある椅子に座っているのだ。
つまり、俺が言いたいのは…………なんで保健室に、しかも俺の隣に早乙女が居るんだろうか。
もうここは早乙女に直接言うしかない!!
「………あの!」
思った以上の声が出てしまい、恥しい。
「ん?どうかした?足首痛い?」
早乙女はどこから持ってきたのか、なんだか難しそうな本を読んでいる。
「あ、いえ、そうではなくて…授業とかは、いいんですか…?」
よし!聞いたぞ!!
とりあえず聞きたかった事を聞けたので心の中でガッツポーズをする。
「あぁ、大丈夫だよ。図書室でサボってただけだし」
「……え?サボり?」
「うん、サボりだよ」
早乙女は普通の事のように淡々と話す。
「サボってていいんですか!?」
「大丈夫だよ。テスト前とかに教科書読めばいいし、それに君の方が大変そうだからほっとけないよ」
早乙女は微笑み、また本に目を移す。
「え………でも…」
そんな言い方をされると、とても申し訳なくなる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって、元々図書室でサボってたら、君が寝てて。世話焼いたのは俺だから」
「そう…ですか……」
あんまり納得いかないけど、本人が言ってるし、大丈夫かなぁ
そう考えながら早乙女をちらっと見ると、早乙女と目が合ってドキッとした。
「な、なんですか」
「いやー?まだなにか聞きたいって顔してたから、聞きたいことでもあるのかなぁって思って」
「そんな顔してません!」
なんだか恥ずかしくなって、目をそらす。
「いーよ!何でも聞いてくれて、あ!なんならこの前、何で声楽部の部室に行ったか言ってあげよっか?」
目をそらした先に早乙女が顔を出す。
「え、」
「え?あれ、あんまり興味ない?」
確かに聞きたい話だけど、その話を自らしてくれるとは思ってなかったので正直驚いた。
まさか、自分から話してくれるなんて………、でも手間が省けて嬉しいけど予想してなかったから心構えが出来てない…!
「大丈夫?」
突然早乙女の顔が近づいて来た。
「え、あ!大丈夫です!」
「そう?何か1人で百面相してるから、大丈夫かなって思って」
「本当に大丈夫です!」
「そう?じゃあ話すね」
そう言って、早乙女が何故あの日声楽部の部室に来たか話し始めた。
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