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早乙女伊澄という男 11
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早乙女は本を閉じて脚を組み、話始めた。
「俺の祖父はこの学校の理事長で、小さい時から周りの人は俺の顔とか財力とかに釣られて寄ってくる。そうゆうのが本当に嫌いでよく本を読んで暇を持て余してた。この学校に半場無理やり入れられたようなもんだけど、ここの図書室の雰囲気が好きで1年生の時から図書室で読書して授業サボってたんだ」
「それは君達新入生が入ってきて2年生になっても同じで、よく放課後とかも本を読みに来てた。そこで君を見つけた」
「え!俺を?」
俺は、どうやって?っと言葉を続ける。
「あれ?知らなかったの?図書室って声楽部の部室が見えるんだよ」
知らなかった…図書室って部室に近かったんだ。
「君さ、毎日の様に歌の練習してたでしょ。声楽部って歌が上手なイメージあるから、何をそんなに練習してるんだろうって思って、声楽部の部室の方に行ってみたら君の歌が聞こえて来たんだ」
「何回か部室の方に来てたんですか?」
改めて俺の歌を聞かれてたと思うと恥しい。
「ううん、あの日が初めてだったよ」
「そうですか」
何回も聞かれてないとわかると、恥しいという気持ちが無くなる。
「まあ、練習してるの様子は何度も見てたけどね」
早乙女は笑っている口元を手で覆い、笑いで震える声で話す。
「あのさ、失敗した時にする、あの髪の毛をぐしゃぐしゃってするの癖?」
「なっ!見てなんですか!?」
み、見られてた!!!
恥ずかしくて顔が熱くなる。
「えー、いいじゃん。あれ可愛いのに」
可愛いと言われ、また更に顔が熱くなる。
か、可愛いって男にいう言葉じゃないだろ!!
するといつの間にか、早乙女の手が俺の伸びた髪を耳にかける。そしてあらわになった真っ赤な耳をみて早乙女は優しく微笑んだ。
「君は本当に可愛いね」
早乙女の指が俺の耳を撫で、そのまま首筋へ。さっきまで離れてた分早乙女が近く感じる。
近い!全体的に近い!!ど、どうする俺!
俺の頭は色んな事が起こり過ぎて、ショート寸前。真っ赤な顔の俺と、何を考えてるかわからない男早乙女伊澄。この状況を早く逃げたい俺は勇気を出して口を開いた。
「さ、早乙女伊澄先輩…………俺の事、君って呼ぶのやめてもらえませんか………」
違う!違うんだ!いっぱい考えたんだけど、何にも出て来なくて……!!
この状況で言う事では無いことを言った自分に言い訳をする。
恐る恐る早乙女を見ると早乙女もキョトンとした顔で俺を見ていた。
「いや!あの!俺に一応名前がある訳で……!名前で呼んでもらった方がいいと言うか、なんと言うか…」
話している途中で諦めた。だって早乙女は目をぱちくりさせ驚いている様子だったからだ。
更にきまずくなった………
気まずい空気の中早乙女が口を開いた。
「え……教えてくれるの?この前怖がらせちゃったし、教えてもらえないかと思ってた…」
早乙女から予想外の言葉が言われた。その上ふにゃっと笑うではないか。
嘘…この前の事、悪かったって思ってたんだ……もしかしていい人…?
「大丈夫です。確かにあの時は凄く怖かったけど……でも!名前くらい教えます!」
「本当にいいの?」
「はい!えっと、俺の名前は橘ひばりです」
「橘ひばり…か、んーじゃあ…ひばりちゃんって呼ぶね?」
「はい!ん…?ひばちゃん!?」
「あ、俺のことは伊澄でいいからね。名前教えてくれてありがとう。それじゃあこれからもよろしくね?ひばりちゃん」
そう言って早乙女は俺の手を握ってニコッと笑った。
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