アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8.咲也の優しさ
-
あの時の密の言っていた”オーガスト”。いづみも最初は聞き間違えかと思っていた。でも咲也の話だとうなされながら「オーガスト」と言っていたらしい。
あの時も密は涙を流しながら”オーガスト”と言っていたが、いづみは不思議に思った。”エイプリル”は聞いたことがないからだ。でも密の記憶に関係することは確かだった。
「俺、最初は4月と8月だと思ってたんですけど、『ごめんなさい』って泣きながら呟いていたので、人の名前かと...」
「そうなんだね。教えてくれてありがとう。他に密さんは何か言ってた?」
「他にですか??...えっと、『約束。』とか『今度はオレが...』とか言ってました。」
「そうなんだ...」
密の記憶に関係があるものなんだろうといづみは頭の中で関連付けていると、咲也から思いがけないことを言った。
「監督...あの...」
「ん?なに?」
「これは、その...あくまで俺の勘なんですが、今言った『約束。』と『今度はオレが...』って言葉、『オーガスト』と『エイプリル』とは関係ないと思うんです」
「え?どうしてそう思ったの??」
「俺にもわかりません。でも何故かそう思ったんです。」
「そっか...。ありがと。密さんが思い出したらわかることだし、何でも関連付けちゃ駄目だよね!」
「はい!聞いてくれてありがとうございます」
「いやいや!私の方こそ咲也くんの考え聞かせてくれてありがとね!」
そうこうしているうちに万里と真澄が昼食を持って部屋に戻ってきた。今日の昼食は臣特製のお粥だ。
いつもは密だけお粥なのだが、今日はみんなお粥らしい。卵と鮭が入っている。
母も私が風邪をひいた時に作ってくれたお粥は卵と鮭が入っていたなぁなんていづみは子どもの頃のことを思い出した。
お粥だけでは流石にみんなのお腹は膨れないので、他のものももちろんある。おかずに豚バラ大根の生姜焼きとレタスで包んである豆腐シュウマイ、さつまいもの甘煮である。
「じゅるり...」
「監督...かわいい...」
「はっ!しまった、よだれが...」
「監督ちゃんも飯食べてこいよ」
「あとは引き続き俺たちに任せてください!何かあったらまた言いますから」
「うん!ありがと!」
そう言っていづみは昼食を食べに談話室に戻った。
-------
昼食を食べ終え、臣と2人で洗い物をし食器を片付けた。そして、左京と3人でまた談話室のソファに腰掛け誉達と咲也に聞いたことを話すことにした。
だけどいづみは、咲也に聞いた記憶のことはなんとなく伏せておく事にした。
「で、だ。有栖川のとこに行ってきてどうだった?」
「えっとですね...」
朝食に降りてくるのに密が来なかったこと。その日誉は少し仕事があって外に出ねばならなくてそのままにしていたこと。稽古が始まる頃に密の姿をまだ1度も見てないことに気づき、部屋へ見に行ったら密が寝ていたこと。声をかけても起きなくて、苦しそうな顔をしているのに気づいて頬を触ったらとても熱かったこと。
誉と密が稽古に来るのをレッスン室で待ってたら誉がレッスン室まで走ってきてね、扉を思いっきり開けてびっくりしたらしいこと。『密くんが大変だ!』って言うからみんな大慌てだったということ。
簡潔に左京と臣に話した。
「そうか。じゃあ、密がいつ体調を崩したのか誰も知らないんだな。」
「わかることは朝食の前には体調を崩していたって事ですね...」
「そういうことですね...。そういえば、密さんが風邪ひいてから誉さんも様子おかしいですよね」
「そうだな...。静かだ」
為す術もなし。病院へ連れていった時もただの風邪。風邪薬を飲ませても高熱は治らず、うなされ続けている。
でも食事はちゃんと食べてくれているというのは不幸中の幸いだろう。
「とにかく御影が治るのを待つしかない...」
「俺たちは自分達に出来ることを引き続きやりましょう!」
「そうですね!」
結局具体的に密の風邪が治せる方法も、風邪をひいた原因もわからなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 18