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春 -2-
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出会いは本当に単純なものだった。
拝み屋としての滝川と、クライアントとしての安原。ただそれだけの関係。
それも、滝川は直に依頼を受けたわけではない。安原が依頼した先の調査事務所の、謂わば助っ人のようなものだった。
『渋谷サイキックリサーチ』────彼の本当の依頼先であり、現在のバイト先でもある。
そんなわけで、渋谷サイキックリサーチの所長とそれなりに親しくしている滝川とそこでアルバイトをしている安原は何だかんだ縁が続いていたのだ。
「谷山さんが『合格祝いで呼ばれたのかと思った』って言ったとき、真っ先に乗ったの滝川さんだったじゃないですか。僕が大学に受かったの、あの時点で知ってる筈なのに『お、受かったのか?』って言われるんですから」
「忘れられたのかと思った?」
「────さすがにちょっと焦りました」
「確かに少年らしからぬ反応だったなぁ。あれ焦ってたんだな」
二人は仲が良い。渋谷サイキックリサーチ(略してSPRともいう)のアルバイトの一人、谷山から『漫才コンビ』などと揶揄されるほどだ。
大抵安原がボケて、滝川がつっこむ。ノリが良く相性も良い文字通りのコンビのようだ。
しかし、その仲の良さはそれだけには留まらなかった。
「らしくねぇといえば、最近お前さんどーしちまったんだ?俺の連絡先が欲しいとかさ」
安原が無言のまま、ぴくりと反応した。
そう、二人はお互いの連絡先も知っている。もと拝み屋とクライアント。今は知り合いの拝み屋と心霊事務所の協力員との関係。
むしろそこまで親しかったら連絡先の一つくらい持っていたって不思議ではないし、何しろ所長が自身の連絡先を明かそうとはしないもんだから調査員が把握しててもまあ不思議なことではないだろう。
滝川にとって問題だったのは、『なぜあの安原が自分の連絡先を聞こうと思ったのか』ということだった。
しかも、個人的に、だ。
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