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俺は少し駆け足で居間に入った
襖を背にして立つ
....心臓がうるさい。
今まで通りにしていたいのに体と心が違う方にいってしまう
―ドキドキドキドキ
ぎゅっと胸をおさえた
苦しい、人を想うのはこれほどまでに辛くて苦しいものなのかと痛感する
俺はあの事故からある一定の人を心から愛すことをいつの間にか拒否していたのかもしれない
もう、好きな人を失った時に悲しまなくて済むから。
だから今の俺は思春期真っ盛りの学生達よりも恋愛経験と言うものは乏しい
今まで恋人もいなければ好きな人もいなかった
みんな同じだった
平等、仲のいい友達はいたが親友ではない
そう考えると人間性に欠けているのかも
―ぎゅっ
暖かいものに包まれた、鬼龍さんの匂いも香ってくる
「鬼龍さん、」
「逃げるなんてひどいじゃないか」
くるっと鬼龍さんの方を向かされた
上手く顔を見れなかったが不貞腐れた顔をしていたような気がする
「....大丈夫かい?」
「っ...」
鬼龍さんは俺を見るとすぐこんな言葉をかけてくれた
優しく抱きしめられた
俺は愛しいとか、悲しいとか、寂しいとかっていう感情が一気に心から溢れてきてどうしようもできなくなった
そして、何かがはち切れた音がした
―プチン
「ぅっ...んヴッ...」
それは涙腺のはち切れた音だった
次々と行き場をなくした涙が頬をつたる
部屋には俺の嗚咽だけが響く
その間、鬼龍さんは俺をずっと撫でてくれていた
自分の不甲斐なさにまた、涙が出てきた
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