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いい夫婦&いい兄さんの日ss②
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ー1122でなくてもー
『さて、今日は11月22日いい夫婦の日ということで長く続く夫婦の秘訣を直撃していきましょう!』
バイト先の喫茶店の一角にあるテレビから生放送だろうか、女子アナが街中でインタビューをしている。
今日は思ったよりもお客さんの入りが少なく、仕事をしながらもテレビに目を向ける余裕があった。
「レキ君、こんな日くらい休んだら良かったのに」
と、パートさん達にからかわれた。
何がいい夫婦の日だ。俺はまだ零士と付き合ってもないのに。
「つ、付き……」
自分の頭に付き合うという言葉が横切っただけで以前の自分の考えとは違うことを自覚させられる。
”付き合う”と言ったら今の関係が壊れてしまうのではないか。
そんな不安がどうしても自分の中で消せない。
『毎日、いってらっしゃい、おかえりのキスを欠かさずすることですなんてきゃっ』
新婚らしき夫婦のお嫁さんが嬉しそうに答える。
なんと恥ずかしげもなく、幸せオーラ全開である。
もし零士が相手なら絶対それだけじゃ治まりそうにないな。
それこそ、毎日数えきれないほど…
「って、何考えてんだ俺」
自分と零士がそんな事になるはずがないのに想像した映像をかき消す。
『私達は趣味がテニスで。休みの日は二人で』
『同じ時間を好きな趣味で過ごせるのって素敵ですね』
30代ぐらいの結婚して何年か経った夫婦がそう答えていた。
趣味か。
好きなことが同じかはわからないけど、零士といる時間はすごく楽しくて落ち着く。
ゲーセンに行った時も、猫カフェに行った時も、バイト先のコーヒーを飲んでいる時も。
趣味に限らず一緒に過ごす時間が…
「って…」
また零士とリンクして恥ずかしくなる。
いたたまれなくなって頭をがしがしとかいた。
『そうですね…お互い干渉しすぎないことですかね。ずっと一緒にいるのって疲れますから』
『生きてきたら自分の意見や譲れないものってあるでしょ?だから深入りしすぎるのも…』
テレビからマイクを向けられた熟年主婦がそう呟いた。
疲れるか…。
確かに元は他人同士。
譲れないもの、曲げられないものいろんなものがあるだろう。
でも、歩み寄ってくれた。
知ろうと、知っても離れないでいてくれた。
きっと、零士は…一人にさせてくれないだろうな。
この先、俺が暗い部屋に閉じこもってたって扉を開けてくれる気がする。
『お互いの思いやりですね。昔からずっとばあさんと好きあってますから』
『こんな時だけ口がうまいんだから』
マイクを向けられたおじいちゃんとおばあちゃんの目尻に皺が寄り笑っている。
思いやりか…
インタビュー後のおじいちゃんはおばあちゃんに水筒を渡していた。
おばあちゃんはおじいちゃんにタオルを渡してあげる。
そんな姿がちらっと映っていてすごく微笑ましくなった。
「レキくーん零士さんよ!」
パートさんの声にびくっとして入り口を見ると零士がひらひらと手を振って席についていた。
気付くと外は少し雨が降りだしていた。
「レキくん、そろそろ上がる時間でしょ?もう上がっちゃいなさい」
「え、でも」
「レキくんいいよいいよ上がって」
いつのまにかカウンターからひょこっと顔を出した店長が手をひらひら振った。
時計は上がる時間の15分前。
「…じゃあお言葉に甘えて」
普段なら後15分だからと最後まで仕事をしてただろうけど、今日はすんなり折れてしまった。
控室に行く途中で零士が注文した伝票が目に入る。
ホットのキャラメルマキアート2つ。
(1つはレキくんの仕事が終わってから)
俺の好きな甘い飲み物。
そして零士のちょっとした気遣い。
着替えが終わって零士の座るテーブルまで行くとほかほかのキャラメルマキアートが2つ置かれていた。
「レキ、おつかれ」
にこっと微笑んだ零士に顔が熱くなるのを感じながら零士の肩にタオルをかけた。
「濡れてんぞ…」
傘はさしたんだろうけど来た時から零士の左肩が濡れていた。
だから仕事場に置いていたタオルをもってきていた。
俺を迎えに来て風邪をひかれたら困る。
「レキ…ありがと」
零士は濡れていた事に気づいていなかたみたいでタオルを掴むと嬉しそうに微笑んだ。
あまりにも幸せそうに微笑むから俺は恥ずかしくなってキャラメルマキアートに口をつけた。
温かいキャラメルマキアートで全身が温かくなった気がした。
END
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