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和樹side
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朝、僕が寝ていると思い込んでいる彼は、音を立てないように慎重な動きでベッドから抜け出していく。
どこか健気なその動きに苦笑しながら、ベッドに残った彼の体の体温に手を置いた。
今日も彼は生きている。
それがどうしようもなく嬉しくて、どうしようもなくもどかしい。
ベーコンの焼ける匂いを合図に、氷のように冷たい床に足を下ろす。
コンクリートに囲まれたこの部屋は、冬の間は冷蔵庫の中にいるようだ。
寒さに身を震わせながら、キッチンに向かう前に暖房の電源を入れる。
悠人がいつものようにコーヒーの甘さを聞いてきたから、それに答えて洗面所へと向かった。
顔を洗って歯を磨き、テレビの音が聞こえた頃にリビングに戻る。
悠人は頬杖をつきながらテレビを眺めていた。
彼の手首にはまったベルトから伸びる鎖が、小さく音を立てる。
僕が彼にプレゼントした真っ赤な手枷は、彼の白い手首によく映る。
けれど部屋の端から繋いだ長い鎖は少々邪魔だ。
もう少し短くするべきかもしれない。
しかしそうすれば、悠人の行動範囲が狭まってしまう。悩みどころだ。
こちらの存在に気付いているはずの悠人は相変わらずテレビを見続けている。
「おまたせ。」
声をかけて初めて目が合う。
そうして二人で手を合わせて、黙々と朝食を食べ始める。
「傘、忘れるなよ」
外を見ていた悠人がポツリと呟く。
一見して優しいその言葉の裏に、どんな殺意が込められているのかは僕には計り知れない。
けれど、その一言に心が踊った。
「分かった、風邪をひいたら大変だもんね」
「看病なんてしないから」
「だろうね、悠人はツンデレさんだからなぁ」
「うるさい、早く食べろ」
「クールだな、相変わらず」
少しだけ赤くなっている悠人に睨まれながらコーヒーを飲む。
直後、喉を焼く鋭い痛みにコーヒーを全て吐き出した。
「ゲホッ、っ、…………!!」
「大丈夫?」
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