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俺が妊娠?!
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子どもが好きかどうかって言われたら「好き」って即答できる。
でも...諦めてるよ?
だって名瀬との間に子どもなんて望めないから。
それでもいいんだ。
名瀬が居ればそれでいい。
ソロコン中、アリーナ席に小さい子がいた。
歌う?ってマイク向けたら何か歌ってた。
可愛くて顔がニヤけてしまう。
ファンに言わせたら、そんな俺が可愛いらしいけど。
「ほんま、可愛いかったで。何歌ってたか分からへんけど」
帰宅して名瀬に話すと、何だか淋しそうな表情をする。
「洸ちゃん子ども好きだよね」
「可愛いやん。あの子ら大人みたいに汚くないし」
「...ごめんね?」
急な謝罪に驚く。
「え、なんで?なんで謝んの??」
「いや...うん...わが子抱きたかったかなぁって...」
それは...確かにわが子が居れば嬉しいだろうけど、それを望めない事は分かってるし、名瀬と別れてまで欲しいとは思わない。
「そんな仮定の話なんてええねん。俺は名瀬が居ればそれでいい」
俺たちの子どもができたら一番嬉しいけど。
想像して笑う。
産むなら俺だろ?
お腹大きくなって、悪阻なんかもあって...。
「...何笑ってんの?」
「いや、俺たちの子どもができたら、妊娠すんの俺かって思ったら笑えてきた」
「それは...確かに」
二人で顔を見合わせて笑った。
ひとしきり笑って落ち着いた頃、キスしながら名瀬が呟く。
「子ども...できたらいいのにね」
そして甘い夜を過ごす。
いつも以上に名瀬を求めたのは、叶わない願いを話していたから?
ソロコン後の疲れもあって、情交後に深い眠りに落ちた。
そんな話題を忘れた頃だった。
なんだか身体が重くて熱っぽい感じが続いた。
「洸ちゃんちょっと熱い?」
「ん~...微熱っぽい」
咳も出ないし放っておいたら治るだろう...と放置して数日が経っていた。
「最近食欲も無いよね?」
「なんかご飯みたら吐き気すんねん」
「流石に病院行ったら?」
「ええって!吐いたわけやないし、そのうち治るよ」
そう言ってまた数日が経つ。
だが、一向に体調は戻らず、食べられないのもあってぐったりしてきた。
「病院、行こう?」
心配する名瀬に連れられて病院へと行く。
振らつきながらも歩いて行くが、病院に着いたとたんに倒れ込んでしまう。
「洸ちゃん!!!」
周囲がザワつくのを感じながらそのまま意識を失った。
気がつけば病院のベッドの上。
心配そうに手を握る名瀬と共に医師の姿が確認できた。
「気が付かれましたか?」
「あ...すみません」
倒れてからそんなに時間は経ってないようだ。
「驚かないで聞いて頂きたいのですが...佐久本さんは妊娠されてます」
「は...?」
「名瀬さんから聞いた症状から考えられるのは妊娠でして...エコーで確認させて貰いましたが、妊娠の確認がとれました」
頭がおかしくなったのだろうか...?
医師の口から「妊娠」なんて言う単語が聞こえる。
「一般的には知られてませんが、とても低い確率で妊娠する男性がいます。世界で何例かの特殊な事ではあるのですが...佐久本さんはその特殊な例に当てはまるようです」
「...は?え?...冗談、やろ?」
「こちらがエコーの写真です。この小さい粒が新しい命ですよ」
見慣れない白黒の写真を渡された。
こんなの渡されても実感なんて全くわかない。
「ドッキリ...?そうやろ?なあ、名瀬??」
嘘だと言って欲しくて名瀬を見ると、エコー写真を見てニコニコ笑ってた。
冗談...じゃ、無いのか...?
再度医者を見ると、喜ぶ名瀬を見ながら頷いてる。
「嘘やろ...」
「事実は小説よりも奇なりって言いますからね。おめでとうございます」
めでたい...のか?
いやいや、めでたくなんて無いだろ!
俺、これからどうなるわけ?
仕事は?事務所になんて説明すればいい?パートナーは名瀬ですなんて言えないだろ...?
「とりあえず落ち着くまでは入院となります。ただ、佐久本さんの場合色々あるでしょうから、希望があれば出産まで完全隔離の個室もご用意可能ですよ?」
医師の提案を受け入れるしか選択肢は無い。
本当に妊娠してるなら仕事なんて出来ないだろうし、マスコミにバレたら普通に生活なんて出来ない。
「とりあえず...何か病名を付けてください。妊娠だなんて事務所に言えないので」
「あぁ、そうですよね。長期入院となると精神疾患系になりますが...よろしいですか?」
なんでもいい、誰にも会わなくて済むのならその方が都合がいいかもしれない。
「ついでに面会謝絶でお願いします」
「分かりました。では、これから約10ヶ月頑張りましょうね」
子ども欲しいねって言ったけど...本当にできるなんて思いもよらなかった。
こんな非現実な事が自分の身におこるなんて...。
「どうしよ、名瀬...」
「大丈夫。どうにかなるよ」
ニッコリ笑う名瀬だけど、今回ばかりはそれだけでは不安はとれない。
深い溜息をついた。
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