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「 いっっっったぁぁ..... 」
白石くんから思い切り叩かれた後頭部を両手で押さえて、
思わず体を縮こませる。
いくらなんでもこれは酷い。
ちょっとくらい手加減してくれてもいいのに。
というか俺何にも悪くないし。
全部誤解だし。
そりゃあちょっと戻ってくるのが遅くて迷惑かけたのは悪かったと思ってるけど、別に授業をサボってたわけでもないのに。
叩くなんてあんまりだ。
涙目で白石くんをキッと睨みつける。
「 ふっっ、ふはっ、あは....あはははっっ、あっははは、
あは、おえっ、うっ、ケホッ、ケホッ、うえっへ、」
いつのまにか俺の上から退いた零くんが、向かいのベットでゴロゴロ笑い転げている。
笑い過ぎて後半は咽せて必死で咳をしていて、
さっきまであんなに可愛かったのに.....とイラッとした。
笑いすぎだろ、このやろう。
っていうか誰のせいだと........
バレないようにこっそり零くんも睨みつけといた。
「 おまえなぁ、なかなか戻って来ないと思ったら、、
なに後輩と取り込んでんだよ。あほか」
白石くんが俺の前で両腕を組んで呆れたように首を傾げる。
やっぱり勘違いされてるし!!
「 だぁかぁらぁ......本当に違うの!別に取り込み中でもなんでもないし!ちょっと零くんもなんか言ってよ、、、」
零くんも変な誤解をされるのは嫌だろう。
彼にも否定してもらおうと思い、そう言ってちらっと視線を向けると、彼は驚いたような顔で片手を口に当てた。
「 えっ....?りょーせんぱい、さっきまでイイコトしてた仲なのになかったことにするんですか??」
その一言で、俺を見る白石くんの目が
不審者を見るそれに変わった。
「 ひどい、、りょーせんぱいから誘ってきたのに..... 」
そう言って零くんが両手で目を塞いで、
「えーん」と言ってあからさまな泣き真似をする。
「 ちょちょちょちょちょ!!!ねぇ、ほんとやめてよ!」
「 .............桜木、、」
「 白石くん!信じてってば!」
俺たちがそんなやりとりをしている間、零くんがまたベットをバシバシと叩いて泣きながら笑ってる。
「 あはははっ、けほっ、けほっ、、あー りょーせんぱいほんとかわいいなぁ。.........ふざけてすみません笑笑
今のは全部嘘なので心配しないでください、りょーせんぱいは不審者じゃないですよ」
やっと、零くんがそう言って俺の疑惑を晴らしてくれた
よかったぁぁ、なんかもう白石くんの目がいよいよ怖くなってもう耐えられなくなってきた頃だったから助かった。
安心して、頭を押さえたまま半分泣きながら白石くんを見上げると、彼はそんな俺の情けない顔を見て吹き出した。
「 ふっ、別に最初からわかってたよ、おまえそんな下半身
ユルくなさそうだし、授業サボってそういう事する度胸もなさそうだしな。」
え、、、、、?
いや、笑って言ってるけど俺のこと遠回しにdisってない?
大丈夫?俺への認識そんな感じで大丈夫なの?
納得できなくて、なんともいえない表情で固まっていると、
「 本当に誘ったのは俺の方ですしね。」
零くんがニヤリと笑いながら呟いた。
いや!それはそれで誤解を生むからね!?
せっかくいい感じに話が着地しそうな流れだったのに、また零くんが余計なこと言うから白石くん困惑してるじゃん!
いや、でも誘われたのは事実か....?
俺たちの方を見てニヤニヤ面白そうに微笑んでいる零くんの笑顔がなんだか小悪魔のように見えた。
「 それより、おまえ手当できたの?ちょっと見せて。」
不意に、白石くんが思い出したかのように
俺の手首をそっと握ってきて覗き込んできた。
あまりにも不恰好に巻かれた包帯を見た白石くんが、
眉間にしわを寄せて顔を歪める。
包帯は適当に巻いてあるせいでぐちゃぐちゃだし、
出血が多いせいか、もうすでに血が滲んできてテーピングの上まで染み込んできている。
しかも所々テープが剥がれて解けかかっているところもある。
珍しく白石くんが不細工な顔になっているなぁと思いながら呑気にその顔を見ていたら、目があった時「.....チッ」っと舌打ちをされた。
「 だからついて行くって言ったんだよ、ばか。利き手じゃない方で手当すんの難しいだろ。」
「 俺、両利きだよ」
「 ならもっと丁寧にできるだろ、ほら、結び直すからこっち来い。」
白石くんが俺の手を引いて、ベットから離れる。
薬や消毒液が置いてある棚の前のソファに座らされて、
白石くんがカチャカチャと棚を開けて手当に必要なものを取っていく。
そっと俺の手のひらに手をかけて、巻かれた包帯をひらひらと解いていく。
俺の血で赤く染まった細長い布が離れていくと、傷口に直に空気が触れてひやっとした感覚がした。
当然ながらまだ全然傷は塞がっていないため、手のひらを少し動かすだけでも血が滲んでくる。
「 .......消毒するから、ちょっと痛いかもだけど、我慢な」
「 .....ん、」
手のひらを差し出すと、白石くんが消毒液で濡らしたガーゼで俺の手のひらについて固まった血を拭き取っていく。
ある程度手が綺麗になったところで、新しい包帯を丁寧に巻いてくれ、簡単に剥げないように何箇所かに分けてテープを貼ってくれた。
「 結構強めに巻いたけど大丈夫?締め付けられてる感ある?」
「 んーん、だいじょうぶ。ありがと」
「 おう 」
そして、さっきまでけらけら笑い転げていた零くんの声がピタリと止んだことに気づいた。
あれ?どうしたのかな、、、
気になって、ベットの方へ振り返って零くんを見てみると、
彼は何故か顔を枕に押し付けて完全に視界をシャットアウトしていた。
..............なにやってんの?
「 零くん.......?どうしたの、、大丈夫?」
「............. 」
ちょっと声をかけてみても、返事がない。
本当にどうしたんだろう。
頑なに顔を上げようとしない零くんが心配になり、もう一度名前を呼ぶと、呻くような声が返ってくる。
「 ...........なんでもいいので早くその血だらけの包帯を
ゴミ箱に捨ててもらえませんか?」
こちらを見ずに、顔を伏せたままそう言う零くんの声がなんだか震えてる気がした。
「 あー、ごめん。気持ちわるいよね、」
彼がこっちを見なかったのはこれを見たくなかったからなのか............。
急いで包帯をゴミ箱にポイして、「もう大丈夫だよ」と言って零くんに謝ると、彼はちらっと枕から顔を上げた。
「 すいません、別に、気持ち悪いとかじゃないんですけど、ちょっとダメで......あはは、、」
眉を下げて笑う零くんがなんとなくか弱く見える。
よく分からないけど申し訳ないことをしたなぁと思いながら、手当に使った道具を片していく。
「 桜木......おまえ授業戻れそう?って言ってもあと15分くらいしかないけど」
白石くんがドアにもたれかかりながら俺に向かって問いかけてくる。
言われて気づいたけど、もう結構時間が経っていて、
自分だけならともかく白石くんの時間まで無駄にしてしまったことを申し訳なく感じた。
「 あ、うん、大丈夫。戻れるよ。」
「 そ、じゃあいくぞ 」
白石くんがくるりと背を向けて保健室の入り口に向かっていく。
零くんの方をチラッと振り返ると、彼はベットに腰掛けてぼうっと宙を眺めていた。
なにかを考えているような、心ここに在らずって感じ。
「 零くん、俺もう行くね。」
声をかけると、零くんが顔を上げて俺の方を見た。
すぐに笑顔になって、その綺麗なグレーの髪を揺らす。
「 はい、ありがとうございます。りょーせんぱいお大事に」
「 うん、零くんもね 」
軽く挨拶をして保健室を出る。
廊下はひどく静かで、窓から吹く風が緩やかに頬を擽ってくるのが心地良い。
「 桜木、いくぞ」
白石くんに急かされて、早足でその背中を追いかけた。
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