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melt.5(R-18)
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「…………で?」
あれから、あっという間にリビングに通され、ソファに座らされ。
目の前には、相変わらずの無表情でこちらを見つめる、恐ろしいほどに美しい男がいる。
「それはこちらの台詞ですけど。業務妨害はやめていただけますか」
その瞳と声音に、俺のことを覚えていると悟りながらも、知らないふりをした。
「……やっぱ、知っててあの場所にいたんだな」
「当たり前でしょう。あなたもそうなんじゃないんですか?」
あの場所は、そういう目的を持つ奴ばかりが集まる、少々有名なスポットだ。
無愛想にそう言って突き放せば、男は無駄に整った眉を寄せて、不機嫌そうな顔をした。
「あくまでしらばっくれるつもりか」
「なんのことですか?」
あくまで追求するつもりらしい男に、うんざりする。
ほっとけよ。お前に関係ねぇだろ。
「お前、まだ未成年だろ。なんでバーとかあんなとこにいるんだ」
その言葉に、気付いていたのかと苦い気持ちになった。
「怪しいと思って待ってみれば、案の定ウリしようとしてるし。だから体を壊すんじゃないのか」
その言葉に、バイト先からつけられていたのだと悟った。
……どーりで。
タイミングよすぎると思った。
ズケズケと立ち入ってくる、その不躾な態度にイライラする。だからお前には関係ないだろって。
でもここでそんなことを言えば、相手の思うツボだ。
あくまで冷静に。
いつも通りに。
目の前にいるのは客で、これはビジネス。
俺の感情は、必要ない。
「こんなこと、もうやめろ。自分を傷付けるだけだぞ」
そんな自明なこと、言われなくても、俺自身が一番わかってる。
だって、傷つくのは他ならぬ俺自身だ。
多分、着いた傷はどのみち一生治りはしないけど、これを続ければ、いつか頭がおかしくなるかもしれない。
でも、そんなのお前に言われる義理はねぇよ。
なんで立ち入ってくんの、一回会っただけの他人だろ。
「………よくわかりませんが、そういうプレイですか?お望みなら対応しますよ?」
へらりと笑って小首を傾げれば、表情はそう変わらないものの、男は苛立った声をだした。
「俺は、真剣に……!」
まだ何か言おうとする男を引き寄せて、無理矢理口付けた。
「……?!」
目を見開き固まる男を見て、少しだけ胸がすく思いがする。
はっ、男にキスされて固まってやんの。ざまぁ。
固く閉じられた口をペロリとなめて、ちゅ、と音をたてて、甘く唇を食む。
抵抗するように、口元と眉間に力を入れたのを見て、そっと股間をなぞった。
「は?!なにして、っ!」
開かれた隙をのがさず、口に舌を差し入れ、中をかき乱した。
くちゅ、と室内に湿った音が響き渡る。
最初は妙に気まずかったそれにも、もう慣れた。
相手の良さそうなところをさぐりながら、丹念に口内を愛撫する。
歯茎の裏、上あご、敏感な部分をくまなくなぞる。
それから、舌に舌をからめて、最後にちゅっと音を立てて吸いあげれば、ピクリと相手が反応するのがわかった。
ゆっくり、わざと見せつけるように口をはなせば、男は唖然とした様子で、未だに惚けている。
「やだなぁ、真剣なのは俺もですよ。だって"15万"で俺のこと"買ってくれる"んでしょ?」
するり、ともう一度股間を焦らすように、ゆっくりとたどる。我に帰ったのか、あわてて手を押さえ込まれるが、気にせず首筋に吸い付いた。
れろ、と触れるか触れないかの距離で舌を這わせれば、相手の身体はもう一度震える。
「ふふ、お兄さん、かっこいいのにかーわいい」
わざと少し舌ったらずに甘くそう言えば、再び苛立ったような声がする。
「だから、やめろって……!」
「えぇ?おれのお客さん追い返しといて、それは酷くないですか?」
つつ、と胸元に舌を這わせれば、それもまた押さえ込まれた。
「そんなに金に困ってるのか、なら金はやるから、とにかくやめろ」
その言葉に、ピシリと固まった。
金は、やる?
「そんなこと、しなくていい。する必要はないから、話を聞かせてくれ」
その言葉は、今までのどんな言葉よりも俺の心臓に、深く突き刺さった。
する必要はない?
しなくていい?
金は、やる??
じゃあ、何。
俺がこれまでやってきたことって、なんなわけ。
頭にカッと血が上って、腕に、頭に絡みつく男の腕を振り払う。そうすれば、存外あっさりと腕は離れた。
力は強い方ではないのに、いざとなると、人間って力出るんだな。
はらわたが煮えくりかえるほど腹立たしいのに、どこかそれを他人事のように眺める自分がいる。
怯んだ隙に、相手を押し倒して、上にまたがって押さえつけた。
「あは、なにそれ。いりませんよ」
「……は?」
「なんですか、もしかして"俺のため"のつもりです?ほんと、なにそれ」
「…………おい?」
そう、俺のためなんかじゃない。
あんたがしたことは、ただの侮辱行為だ。
俯いたままひとりごちれば、こちらを伺うように手が伸びてくるのがわかって。
パシン!!!!
その手を、思い切り振り払った。
その衝撃で、少しだけ苛立ちが紛れる。
その機会を逃さず、こみ上げた怒りを、深く深呼吸してやり過ごす。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
数えれば、もういつも通りの自分だ。
「やだなぁ、これはビジネスですよ?何もしないのにお金なんて、もらえるわけないじゃないですか」
「なぁ、やめろって」
ニッコリ笑って言ってやったのに、どこか痛ましそうにこちらを見つめる目が、気にくわない。
「ふふ、男なんて不安ですか?大丈夫ですよ。俺、ネコですし、うまいって評判なんで。あなたはただ寝ててください」
そう言って、ポケットから小分けのローションと、コンドームを取り出した。
ぺり、と封を開けて、ローションを手に取る。
ヌルヌルと光るこの液体は未だに好きになれないが、これが無ければ大惨事になることは、経験済みだ。
「やめろ!俺はこんなつもりじゃ、」
未だに悪あがきする口を、ローションが付いていない手で、押さえつけた。
「じゃあ、俺を連れてくるべきじゃありませんでしたね。俺のこと、なんだと思ってるんです?冷やかしてるんですか?」
「……!」
絶句する男に向かって、今日一番の笑顔を向けた。
「大丈夫です、洗浄は済ませてますし、コンドームもつけますから」
「そういう問題じゃ、」
もうそれ以上反応する気にもなれず、手に馴染んで緩くなったローションを流し込みながら、ゆっくりと指を差し込む。
「……ん、」
いつまでたっても慣れない違和感に声が出て、男がこちらを凝視するのがわかった。
あえてなんの反応も示さず、ぐるりと機械的に内側をほぐしていく。
べつに気持ちよくなりたいとも思わないし、最低限ほぐれればいい。キツイ方がウケもいいし。
三本入るようになったところで、そこに、男のものを服の上から、擦りつけた。
「よかった、たってる……」
男なんて、刺激があればなんでも立つ。そうわかりながらも、嫌味のつもりでそう言えば、男はハッとした顔をした。
「待て、やめろ!まだちゃんとほぐしてないだろ!」
「その方がしまって気持ちいいですよ?」
「お前が痛いだろ!」
「そんな素人じゃないので大丈夫です」
そんなことを今まで言われたことがなかったので、対応に困る。なぜそんな事を気にするのか。
べつに俺が痛かろうがなんの問題もないだろ。
それとも、隙を見てまたやめさせようとしているのか。
バタバタ抵抗する身体を押し込めるのは、骨がおれる。
それでもどうにか、ベルトを外し、ズボンを脱がせて、男のブツを取り出して。
「……!」
固まった。
なんだこれ、でっか。
おもわず股間が縮みそうになったが、どうにか耐える。
服の上からでなんとなく大きいのはわかっていたが、ここまでとは。どこの凶器だよ。
「だからいっただろ」
疲れたようにそう言うのにムッとして、そのまま後ろにそれをあてがう。
「は?!うそだろ、お前、」
いける。
最初だって、ここにこんなものが入るなんて信じられなかった。けど、なんだかんだいけたんだから、今回もどうにかなるだろう。
そう思い、それを呑み込もうと力を込めると。
「いやだから、まて!!!!」
「あ、?!」
急に視界が反転した。
「わかった、わかったから落ち着け」
そうして、男に押し倒されたのだと気付く。
「キャンセルは、うけつけませんよ」
それでもあくまでそう言えば、男は気まずそうな顔をした。
「…………わかった、俺も、お前の気持ちを考えずに無神経だった。今回はちゃんと責任をとる。だから待て」
そう言われれば、それ以上固辞する気にもなれず、大人しく力を抜いた。
そうすれば、ホッとしたように男は息を吐く。
「俺は、言った通り、お前を15万で買う」
「……はい」
「だから、他の客と同じように、俺の好きにさせろ」
「わかりました」
そういうことなら、なんの問題もない。
まして15万も払ってくれるのであれば、まず何をされても文句は言えないだろう。
男はもう一度伺うようにじっとこちらを見たが、あくまで意思をかえるつもりはない。
男はそれでもしばらくこちらを見ていたが、やがて頭を掻き回し、ため息をひとつつく。
「……はぁ。折れねえ、か。仕方ねえな」
そう言って顔をあげた男ははじめて、その口角を上げてみせた。
「…………後悔するなよ?」
その言葉と、ニヤリとした笑顔に嫌な予感が沸き起こる。
それでも、一通りのプレイの経験はあるつもりだし、耐えられないことはない。
「……そちらこそ」
なんだか、今更取り繕うのも馬鹿らしくなってきて、端的にそう言えば。
男は、その笑みを深めた。
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