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青峰 song10
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♪"君は来るだろうか 明日のクラス会に
半分に折り曲げた「案内」をもう一度見る
つきあってた頃 僕ら手をつなぎながら
歩いた並木道 たくさんの人がゆくよ"
「大ちゃん!!同窓会出席するよね??」
「あぁ??」
さつきがいきなりオレの部屋に入ってきてそんな一言を投げかけてくる
てか、同窓会??あー・・・・そういえば何かハガキきてたなぁー?
「あー・・・どっかそこら辺にハガキ置いてあったよーな・・・・」
「もう!!・・・・ってこれ??なんでこんなくしゃくしゃなのよ!!ちゃんと中身確認したの?!」
「うっせーなぁ・・・おら、かせよ」
ハガキを広げて見ると中学の合同同窓会と書いてあった
「あぁー?ホテルで同窓会??」
「もう、やっぱりちゃんと見てない!!中学全クラス集めてクラス会をするから人数も多いし、ホテルでやる事になったの!だからきーちゃんもみどりんも皆来るんじゃないかな??」
「・・・・テツも来んのか??」
「・・・ん~・・・テツ君はどうだろ??」
中学、オレとテツは付き合っていたがまぁ、色々あって別れた。それ以来テツとは会っていねぇ。
高校も別々で、卒業してオレはあてもなくただ大学に進学して今に至る。
ちなみにこのうるせーさつきも一緒の大学だ。
他のキセキの連中も大学やら専門学校に進学したらしい。
テツだけはさつきでさえ情報が掴めていない・・・
「・・・来るといいね?」
「・・・・うっせーよ」
♪"ああ いつも僕が待たせた
駅で待つはず無い 君を捜すけど"
「・・・おぅ、テツ!!待ったか??」
「・・・お疲れ様です。待ちました。マジバのシェイクで手を打ちましょう。」
「はぁ?!お前、昨日も奢ってやったろーが?!」
「・・・・」
「はぁ・・・ったくしゃーねーな。毎回さつきや黄瀬やらを撒くのに必死なんだよオレは・・・」
「修行が足りませんね」
「あーぁ、オレもテツみたいに姿消せればいーのになぁー」
「・・・嫌味ですか?それに僕は姿を消してるつもりはないんですが・・・」
「ま、とりあえず行くかー?・・・ホレ」
「・・・・・」
───・・・・学校では照れくさいからとテツが言うもんだから、いつもオレとテツは待ち合わせをして一緒に帰っていた。
遅い時間は人目も少ないから必ず手を繋いでいた・・・それが俺らの恒例だった。
いつも部活終わりテツはすぐ帰るが、オレは黄瀬のヤローに1on1しようとか、さつきがテツと待ち合わせしてるのを知っていて一緒に帰ろうとしたりで毎回それを交わすのに必死でいつもテツを待たせオレがあとから来る状態がほとんどだった。テツも遅くなるのを見越してバス停のベンチに腰掛け本を読んでいた。
───結局オレはさつきがあまりにもうるさいから同窓会に出席する事になった。
あの日、いつもの場所でテツと待ち合わせていたバス停のベンチでさつきと待ち合わせる。
・・・もしかしたらって期待がオレをソワソワさせる。
ベンチや周りを見渡したってテツは居もしないのに・・・
「─・・・大ちゃん!!」
「・・・あぁ??」
「もう!!さっきから呼んでるのに!!」
「おー・・・わりぃ、なんだ、馬子にも衣装ってやつだな??」
「もー!サイッテー!!」
同窓会がホテルでやるもんだから、エライ気合いの入った服を着たさつきがそこに立っていた・・・
「ほら、バス着たから行くよ?!」
「・・・だりぃーな」
「もう、そんな事言ってないで!!みどりんはもう着いてるみたいよ??」
「あ??アイツらしーな」
「遅れるなんてありえないのだよ!って言われちゃいそーね?w」
「・・・・ハァ」
♪この声が枯れるくらいに 君に好きと言えばよかった
会いたくて仕方なかった どこにいても何をしてても"
行く途中、結局テツは同窓会には来ないと聞かされた。
いや、そもそも連絡先すらとれてないんだから来る訳がねーか・・・・。
───テツの家は父親が自営業である程度社員もいる会社でそこそこ良い暮らしの家だ。
まぁー赤司には全く及ばないけどな。
だが、ある日事業に失敗し借金を抱えてしまった。
そんな時にテツは・・・
「もう、一緒に居られないかもしれません・・・」
「はぁ?どーした?急に・・・」
「・・・父親の事業が失敗しまして」
「はぁ?!大丈夫なのか?!」
「借金を抱えて・・・もしかしたら皆にも迷惑をかけるかもしれません。なので・・・」
「は?待てよ、それあくまでも親の話だろ??」
「・・・ですが、今の中学にはもう・・・」
「おい・・・オレは待ってるからな?明日もここで待ってるからな?!」
「・・・・・すみません」
「──・・・テツ!!」
次の日テツは学校に来なかった。
もちろんあの待ち合わせ場所のベンチにもテツの姿はなかった。
さつきの情報によると、思ったより親の借金はデカく、夜逃げをするような形で居なくなったらしい・・・・
結局、テツとオレはあの日あったのが最後だった。
思えば、オレはテツに何もしてやれなかった・・・
自然と付き合い始めたオレ達に言葉はいらなかった。
だから、お互いに『好き』の言葉もなかった・・・
あの日・・・オレがもっとテツを引き止めていればよかったんだ。もっと、ちゃんとテツに好きの言葉をあげればよかったんだ。
ただ、『待ってる』それだけの言葉で、オレはテツの手を離してしまった。
あれから何度もあのバス停に来ては空を眺めて帰る毎日だった。その内にオレは待つことをやめてしまった・・・。
♪"夕方の雲が ホームの空を抜ける
この街で僕は 夢を見て旅している"
同窓会・・・やっぱりテツの姿は無く、オレは早々帰ることにした。
さつきはまだ友達と居ると言って二次会に出席するみたいだったからそのまま1人でホテルを出た。
キセキの連中とも会ったけど相変わらずだった。
だけど、一つだけ違ったのは誰もテツの事だけは話題にも出さなかった。
らしくもなく、アイツら気を使いやがって・・・
早く抜け出して来た外は夕暮れでまだ少し明るい街中をあてもなく歩き始めた。
マジバ・・・本屋・・スポーツショップ・・・ストバスのコート・・・
気づけばテツとよく行った道のりを歩いていた。
無意識にテツの面影を探していたのか・・・
あの日待つことを辞めてからテツを思い出すことは無かったのに、さつきのせいで思い出してしまった・・・
♪"ああ 青いベンチ腰かけ
君が手をふった あの日思い出すよ"
そして、あのバス停のベンチに座り空を見上げ目を瞑る
「はぁ・・・・テツ・・・テツ」
呼び掛けた言葉も返事は返ってこなくそのまま空に消えていく。
「・・・・・あお・・・みね・・・君?」
「・・・っ!!テツ?!」
確かにテツの声が聞こえた。
なのに、辺りを見回してもテツの姿はどこにも居ない。
一瞬空耳かとも思ったが、オレがテツの声を聞き間違えるハズがねぇ!確実にオレの耳にテツの声が聞こえた!!
オレは走り、テツを探し始めた。
♪"この声が枯れるくらいに 君に好きと言えばよかった
もう二度と戻らない恋 痛みだけがちょっと動いた"
「────テツ!!!」
「・・・・っ!!」
やっと見つけた。
息を切らしてオレから逃げようとするテツの腕を掴む
「・・・逃げんなよ」
「・・・ハァ・・・ハァ・・・まさか追いつかれるとは・・・」
「オレをなめんなよ??」
「・・・はぁ・・・」
「お前・・・なんで・・・・」
「・・懐かしくなったんです。今は田舎に住んでるんですけど、久々にこっちに来て懐かしくなってついここまで来てしまいました・・・」
「皆、お前の事口には出さないけど心配してんだぞ?それにオレだって・・・ずっと・・・」
「すみません・・・ですが、もう何もかも変わってしまったんです。もう、あの頃には戻れない・・・」
「オレはまだ!・・・まだ、お前の事・・・」
「っ!それ以上言わないで下さい!!」
「なんでだよ!!」
「・・・・すみません、もう・・・僕のことは忘れて下さい・・・」
「テツ!!」
オレが呼び止める声も無視して、テツはオレの前から去って行った・・・
一方的に、改めて別れを言われたみたいでオレはそれ以上何も言えず、引き止める事さえ出来なかった。
「結局・・・言えなかったな」
いや、言わせてもらえなかった・・・・
♪"ああ 季節は思ったよりも進んでて
思いをかき消してく 気づかない程 遠く"
────・・・あれから季節は巡り数年たった
大学も卒業し、オレはある会社に就職し働いてる
忙しさにまみれ、いつしかテツの事を考える事がなくなった頃、さつきから連絡があった。
会って話したい事があると・・・
「大ちゃん!!」
「・・・おう、元気か?」
さつきは今赤司の会社で赤司の秘書をしている
「うん、相変わらず忙しいけどなんとか・・・」
「まぁ、赤司の会社はでっけーとこだし、ちゃんとした所だもんなー・・・」
「それに定時より少し早く帰らせてくれるから助かってるよ」
「まあ、腹ん中の子供に影響ない程度に頑張れよ」
「大ちゃんが優しいなんて珍しい!」
「あぁ?!」
「ウソウソ!ありがと♪」
─・・・さつきは1年前に同じ会社の男と結婚し、つい最近妊娠したと報告を受けた。
仕事もギリギリ頑張りたいってワガママ言って赤司に気を使って貰いながら仕事してるらしい。
赤司に気を使わせてどーすんだっつー話なんだけども。
「んで?話ってなんだ??」
「・・・大ちゃん、まだテツ君の事引きずってるでしょ?」
「・・・その話はしねーんじゃなかったのか?」
「・・・それが・・・」
「なんかあったのか?」
「・・・落ち着いて聞いてね?」
「なんだよ?」
「風の噂で聞いたんだけど、テツくん・・・結婚するって・・・」
「・・・・は??」
何言ってんだ??テツが結婚??
「ある会社の社長令嬢と結婚するって・・・」
「・・・はっ、」
「っ!でもね!きっと、いや!絶対政略結婚なんだと思うの!!テツ君はきっとその人の事好きで結婚する訳じゃ・・・」
「さつき、お前にしては随分あやふやな情報だな?ほんとはちゃんと知ってるんじゃねーのか??」
「・・・っ!」
「・・・やっぱりな」
「大ちゃん・・・」
「好きか嫌いかなんて関係ねーよ。結婚するのは事実なんだろ?」
「・・・・うん」
それ以上の言葉もなくオレ達はそのまま別れて帰った
さつきは終始心配して声をかけてきたけど、オレは忘れかけていたハズのテツの事で頭がいっぱいになりそれ所じゃーなかった。
♪"この声が枯れるくらいに 君に好きと言えばよかった
会いたくて仕方なかった どこにいても何をしてても
この声が枯れるくらいに 君に好きと言えばよかった
もう二度と戻らない恋 痛みだけがちょっと動いた"
その後、テツはほんとに社長令嬢と結婚した
社長令嬢の結婚ともあって、随分人が呼ばれたみたいで、もちろん大手の会社である赤司とその秘書のさつきが呼ばれていた。
オレはさつきに送られた携帯で撮影した写真を眺めていた。
聞くところによると父親の為の政略結婚だった・・・
だけど、写真の中のテツは優しく微笑んでいた。
「結局最後の最後までお前に好きの言葉は言えなかったな・・・」
後悔とゆーよりも、ただ伝えたかった。
もう、あの頃みたいにもしもなんて思わないけど、ちゃんとオレはお前の事が好きだったと伝えたかった。
覚えていて欲しかった。
「バカだな、オレは・・・」
未だにこの胸に残るテツへの想いを抱きながらオレはまた明日を生きていく────・・・・・
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