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1〜プロローグ〜
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俺には年の離れた兄貴がいた。
兄貴はクズでクソな人間で、
死ぬ間際に自分の息子と心中しようとしたらしい。
なんでも多額な借金を背負っていたんだと。
会社もリストラされて、
2年前に奥さんと離婚して、
さらに息子は虐待にあっていたと聞く。
その兄貴の葬式の日。
俺達の両親は3年前に他界。
葬式に参加したのは弟の俺と、
祖父母、親戚、兄貴の数人の親しい友人。
そして…
心中に付き合わされ、
長い間虐待されてきた兄貴の一人息子。
棺桶に入った兄貴の顔を見て泣きもしない。
そいつの名前は御山千秋。
千秋とは数回会ったくらいしか記憶にない。
記憶の中のそいつはいつも青痣や切り傷を作ってた。
人の家に口出しするほど俺は良い奴じゃないから
兄貴に暴力を振るわれていると知っても何もしなかった。
久しぶりに見た千秋は
身長が伸びていたものの、まだ16歳で幼さを感じる。
腕や足は細くて折れそうだ。
顔には相変わらず殴られた痕がある。
兄貴よりは奥さんの方に似て
端正なまでに整った綺麗な顔。
周りの親戚もそんな千秋に見惚れていた。
だが、千秋に冷たい目を向けるのがほとんどだ。
「良樹さんの子供なんて関わりたくもないわ。」
「一体誰が引き取るの…お爺さんもお婆さんも
高齢で引き取るのは難しそうよね。」
「良樹の弟は?でもまだ若いし可哀想か。」
俺の名前が上がってるのか…。
正直行って面倒ごとは避けたいから
千秋なんて引き取りたくないと思ってる。
「あ、あの優也さんっつ。」
震える声で話しかけてきたのは千秋。
「何?」
「お父さんのことで…葬式代とか、
親戚のことも、全部任せてしまってごめんなさい。」
「仕方ないだろ。
お前はその時病院で入院してたんだから。」
「ご、ごめんなさっっごめんなさい!」
別に怒ってはいない。
でも千秋は体から音が出るんじゃないかって具合に
ガタガタと震えてる。
長い虐待生活のせいで何かがあれば
すぐに謝る癖がついてしまっているのだろう。
「怒ってないから、謝るな。」
そう言ってやれば少し震えが治まった。
その後千秋とは兄貴のことについて少し話して別れた。
兄貴の葬式が終わって1ヶ月が過ぎた。
風の噂では千秋は遠い親戚の家に引き取られたらしい。
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