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不協和音 28
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今日一日、クラスの皆んなに「体調は大丈夫?」とか「傷はどう?」とかの心配をされた。皆んなが優しくて嬉しかったけど、逆に僕は気を使い過ぎて疲れた気がする。
早く帰って休もうと思い、帰りのHRが終わるとすぐに拓真の席に行き、「帰ろう」と声をかけた。
「おう」と笑って立ち上がった拓真に、クラスメートが声をかける。
「宮野、今日は委員会があるから、まだ帰るなよ」
「えっ?今日だっけ?はぁ…、ごめん、玲。先に帰ってて。大丈夫?一人で帰れる?」
僕の頭にぽんと手を乗せて、拓真が顔を覗き込んで心配そうに言う。
「もうっ、子供じゃないんだから帰れるよっ。じゃあ拓真、頑張ってね」
僕は、頭の上の拓真の手を退けると、手を振って教室を後にした。後ろから「気をつけて帰れよ」と拓真の声が聞こえてくる。
その声に微笑みながら、玄関へ向かう。拓真はいつも僕を気遣って心配してくれて優しい、と心が暖かくなった。
靴を履き替えて、玄関を出る。学校の門を抜けてしばらく行くと、少し前を歩く悠ちゃんと涼さんの姿を見つけた。
途端に僕の胸がどきどきと高鳴る。
ーー悠ちゃん…、まっすぐ家に帰る?だったら、一緒に帰りたいな…。
そう思うけど声をかける勇気が無くて、二人の少し後をとぼとぼと付いて歩いた。
すると、何かの拍子に後ろに目を向けた涼さんが僕に気づき、手を振って名前を呼んだ。
「おーい、玲くん!こっちおいでよ」
呼ばれたけれど、行っていいものか戸惑っていると、涼さんが僕の傍に来て、腕を引っ張って悠ちゃんの元へ連れて行った。
「玲くん、後ろにいたんなら声をかければいいのに」
「え…っと、話の邪魔をしちゃいけないと思って…」
「ええっ、何、その気遣い。俺は玲くんに毎日でも会いたいんだから、声かけてくんないと寂しいな」
相変わらず優しく接してくれる涼さんに、僕は小さく頷く。悠ちゃんは、僕がここにいる事をどう思ってるんだろうとちらりと見ると、眉間にしわを寄せた嫌そうな顔で僕を見ていた。
途端にズキンと僕の胸が痛み出す。僕は、震える声を振り絞って言った。
「やっぱり、僕…一人で帰るので、悠ちゃんと涼さんは二人で帰って下さい…」
「えっ、なんで?…あっ、悠希、おまえそんな顔するなよ。玲くんが困ってんじゃん。玲くん、気にすることないって。俺が一緒に帰りたいの。ね、いいでしょ?」
「え…、でも…」
僕は悠ちゃんを気にして見ていると、突然女の人の声で、悠ちゃんの名前が呼ばれた。
「悠希!良かったっ、やっと会えたっ。電話しても出ないから会いに来ちゃった。ねぇ、今から遊びに行こうよ?」
サラサラとした髪の長い綺麗な女の人が現れて、悠ちゃんの腕にするりと腕を絡めて身体を密着させる。
見たくなかった光景を目の当たりにして、僕の心が悲鳴を上げた。
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