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「鷲尾(わしお)学園の理事長が、古くから付き合いのあるジャズ仲間で。たまたまあいつの話をしたら、今年度からΩ性専門の養護教師を試験的に配置すると言ってだな。優秀な進学校だから、不釣り合いだとお断りしても、是非入学して欲しいとおっしゃってくださってだな」
「あら、いい話じゃない。あの子、この辺りの公立高校、受験資格すらないって、この前ヒステリック起こしてパニックになってたし。まあ、少し通学には不便だけど、自然に囲まれたステキな学校よ。そうするといいわ」
「試験は特殊性別枠で受けさせてもらえるそうだ。兄二人と違って、ろくに、勉強も運動もできない出来損ないだ。そっちの方が却って好都合だろう。聖美(きよみ)、明日花井(はない)小児科に、予約を入れておいてやれ。Ω性の生徒は掛かり付け医の診断書が必要らしい」
父の隆明(たかあき)は、黒いビジネスバッグからファイリングされた書類を取り出し、食後の紅茶を支度する母の聖美へ手渡した。
「いいけど、花井さんって、何だか妙なのよね。あの子が来院すると、もの凄く嬉しそうって言うのかしら。ほら、息子さんも今一緒でしょう?なぜか、うちが行くと決まって二人で対応してくださるの。周りの奥さんからはビップ待遇ね、なんてからかわれるんだけど」
「馬鹿なこと言うな。彼もオレの知り合いに紹介してもらった、優秀なα家系出の人間だ。そもそも、Ω性とは言え、誰に似たのか、どうしようもない奴だ。顔付きも性格も、彼らのような立派なαを魅了するような代物とは到底思えない。余計な詮索は、花井さんに申し訳ないだろ。聖美も、いちいち周りの反応を、今更気にするんじゃない」
隆明は紅茶にレモンを浮かべると、仕事の資料に目を通しながら、それをゆっくり口元へ運ぶ。
聖美も、そうよねえと相槌を打った。
「あら、あなたそこにいたの?」
聖美が、ようやくこちらに気付く。
「お夕飯はみんなが済んでからと、いつも言ってるでしょう。やだ、何その頭。また明善(あきよし)くんね、あの子、本当に気が優しいと言うか、弟を可愛がりたがるんだから。鷲尾って校則とか、どうなのかしらねえ。そんな派手な赤い髪を見たら、みんな卒倒するわよきっと」
聖美はあからさまに怪訝な表情を浮かべたが、隆明はこちらを見向きもしなかった。
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