アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
.
-
時計は17時を指している。
只今、洗面台が大渋滞です。
「ねえ、まだ!?早く変わって!」
「ちょっと待てって、髪セットしてんだろ今!
見て分かれよ、、」
ワックスを手でなじませている怜斗が眉間にしわを寄せて言う。
「お前、髪の毛俺より短えじゃん!30分には出ないといけねえのに!」
「久々にスーツ着たから、セット難しいんだよ。
黒髪だし、ちゃんとしないと芋っぽくなんの。
紫之はストレートなんだし、セットする必要ねえだろーが。それにスーツでもねーし。
大人しく待っとけー、もう終わるから」
俺の髪型は、斜め前髪の肩上くらいの長めな髪の毛で、確かにストレートなんだけど、俺だってこだわりがあるし、結ぶか結ばないか迷っているのに、、。
この髪型のおかげでスーツが似合わない。でも1番似合ってると怜斗に言われたからこの長さを保っている。
だから、今日は一応、黒で統一したシックな服装にした。
黒のタートルネックに黒のテーパードパンツ、
アクセントを効かせて
ゴールドのラインが入った洗礼された細めのベルト。
血の通いが全く分からないくらいの真っ白な肌を際立たせるために、
アクセサリー類は全てシルバーにした。
これらに、マニッシュな革靴を合わせる予定だ。
「だって俺スーツ似合わないもん。」
不貞腐れていた俺に、前のタトゥーだらけの壁男が終わった、、と呟いて振り返る。
「お前はそっちのが似合ってるよ。
後、髪結ばないほうが俺は好きかな、
耳とかかけて見たら」
洗面台に少し腰掛けながら、俺の頬に手を添えて、そこから耳に手を滑らせていく。
スーツのせいでかっこよさがいつもより3割増しだ、、。
髪のことを言ったとはいえ、好きなんて言葉、
久しぶりに聞いたせいで、免疫がなくなってきている。
驚いて怜斗の顔を見た直後、恥ずかしくなって目線を下げる。
頭上からは大きな溜息が聞こえた。
「そうやって大きなお目目を伏せてる悩ましげな顔が男ホイホイになるからな〜
なんと言うか、紫之って未亡人感?お人形感?があんの。とって食われちゃうよ?
気をつけろよー」
困ったように言って、またいつものように俺の頭に手のひらをポンとのせて洗面所から出ていく。
喜んだのもつかの間。
何となく、怜斗の言い方が気になった。
俺のことを心配してくれるのは嬉しい。
でも、何と言うか、、
怜斗が嫌だからとかじゃ、ないんだ、、。
と思ってしまった。
こんな時、怜斗が足りないと思ってしまうんだ。
「、、とって食われちゃったら、どーするの」
俯きながら、咄嗟に口をついて出た。
出て行こうとした怜斗が振り返る。
「ん?どうした、、?」
「ん?いや、なんでもない!やべっもう時間じゃん!急がねえと!」
怜斗はまだ何か言いたそうな顔つきだったけど、
急いでその場を離れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 29