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翌日の早朝、俺はチラシ配りを行っていた。今日はいつもより早く終わるようにきちんと配った。そのおかげか、随分と余裕ができ、俺の足はある所へと向かっていた。
「なんで来てんだ俺は……。」
俺が向かっていた場所は、昨日レインと初めて会った場所だった。
そりゃいるわけねぇよな……。
「帰ろ……。」
そう思ってフィオーレへと向かおうとした。
「ショウマ。」
ドクンと心臓が強く波立った。
ドキドキする心臓の鼓動を感じながらゆっくり、後ろを振り返る。
「……っ、レイン……!」
そこには案の定レインがいた。
昨日と同じ服装だった。ヒラヒラしていてとても歩きづらそうな服。でも、貴族感溢れる代物。
名前、覚えててくれたんだな……。
その事に、まずは安心してホッと息をついた。
そして、また不安の渦が心の海をさまよう。
なら、なんで昨日は無視を……?
俺がそう思ってることに気づいたのか、レインは急に頭を下げた。
「悪い!昨日無視して!」
「は、え?ちょ、お前頭下げんなよ!」
太陽の貴族だろーが……一応。
俺がそう思っているのもお構い無しに、レインは謝り続ける。
「本当に、悪かった……反省してる。本当にごめん、なさい……。」
傍から見ても犬が耳を垂らしているように見えるその姿に、俺はこんな時だと言うのにキュンとしてしまう。
キュンとしてる場合か!!なんて自分にツッコむ暇もなく、俺はレインに謝るのをやめてもらうように懇願する。
「レイン、そんなに謝らなくてもいいから……な?」
「……許して、くれるのか……?」
レインに上目遣いで見つめられて、俺は全力で頷くことしか出来なかった。
しばらくしてレインが落ち着いた頃。レインはポツリポツリと俺を無視した理由について話してくれた。
「俺、ショウマの知ってる通り太陽の貴族なんだ。でも、家には厳しいルールがあってそれを破ると、罰を与えられるんだ。」
想像通りと言えば、そうかもな……。
そう思いながら頷く。
「そのルールの一つに、一般人とは特定の距離を置かなくてはならないってのがあって……。」
一般人ね……。
「でも、流石に昨日のは堪えたぞ……せめて一言言ってからにしてくれねーと……。」
会ってすぐに忘れた振りなんて……俺の心が折れる……。
「わ、悪い……。でも、俺とショウマが仲がいいってバレたら、ショウマにも罰が下されると思った、から……。」
レインはしゅんとして、だんだん声が小さくなっていく。でも、俺は聞き取った。
「俺に?」
「うん……。」
それは……まあ、別に……。
いいとは言えないけど……うーん、レインと一緒ならいいって言ったら引かれるか……?
しばらく沈黙が続いた。それから、俺がその沈黙を破った。
「事情はわかった。ようは、レインは俺を助けてくれた、でいいんだよな?」
レインはこくこくと縦に頷く。
「……よかった。」
レインは弾かれたように顔を上げて首をかしげた。
「実はさ、レインが俺のことを忘れたんだと思って、ちょっと凹んでた。」
それを聞くと、慌ててレインが謝り出す。
「ごめっ……!」
「でも。」
俺はレインの言葉を遮った。
「俺はレインをここで信じて待つって決めてた。」
俺は懐から紫のアネモネを取り出して、レインに手渡す。
「花……?」
俺は少し恥ずかしくなって後ろを向いた。
「そいつは紫のアネモネっていう花。花言葉は、あなたを信じて待つ、だ。」
やべ、言ってて恥ずかしくなってきた。
「……ま…。」
後ろでレインが何かを言った気がした。
「レイン?」
俺は振り返った。そして、レインの表情を見た瞬間、俺の心臓はドクンと大きく波だった。
え……っ
「ありがとう、ショウマ……!」
ぶわっと一気に顔が赤くなるのを感じて、片手で顔をおおった。
なんだ、今の……!!
バクバクと心臓の鼓動が激しい。もしかしたらレインに聞こえてしまうんじゃないかってくらいに。
ヤバいヤバい…っ…ヤバいって!!
レインの今の笑顔が脳内に焼き付いて離れず、身体が熱を持ち始める。
「ショウマ。俺、これ大切にする。お前が信じてくれるなら、俺はそれに応えたい。あ、明日も、ここで会えるか?」
目を閉じればさっきのレインの笑顔がまぶたに映って、心臓の鼓動は激しさを増す。
そんなことをしていたからか、俺は少し反応が遅れてしまう。
「……え、ああ、何?」
「だから、明日もここで会えるかって聞いたんだけど……って、お前顔真っ赤だぞ?大丈夫か?」
俺は顔を覗き込もうとしてくるレインから逃げるように、「大丈夫、大丈夫!」と強く言った。
「そうか。ならいいけど。」
レインは俺に背を向ける。
自分でレインから逃げておいて、レインが俺に背を向けるのを見て寂しいと感じてしまうのは、自分勝手というやつなのか。
「じゃ、また明日。」
……っ、明日……。
レインから言ってくれたことが嬉しくて、頭がぽーっとする。
「おう。」
俺はレインに手を振る。
「っ!!」
それに対して、レインは頬を赤く染めながらの笑顔で、それに振り返してくれた。
「……。」
俺は胸に手を当てた。
ドクンドクンと心臓が波打つ。それを俺は、心地よいと感じていた。
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