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「オドント……グロッサム……」
特別な、存在……
俺は心がぐらつく。これはレインが意図して俺に渡した花なのか、それともただ何も意図はないのか。
「なに?どうしたの?」
パッと俺の手からオドントグロッサムを奪う。
「あ…」
「この花、オドントグロッサムはね、あんまり一般の人には知られていない花なのよ。主に地位や名誉がある偉い人が想い人に渡す、そんな花なの。まあ、花言葉を知ってるのはそうそういないみたいだけど。」
クスクスと笑って俺に聞かせてくれたその話を聞いて、俺は拳を強く握りしめた。
「……ねぇ、あんた……最近おかしいわよね。いくらなんでも分かるわよ?」
さっきまで笑っていたユミさんが、表情をガラリと変えた。俺の目を真っ直ぐ見つめて、嘘偽りは許さないという表情に。
「……あいつにこの花を貰った……でも、俺はあの時この花の名前も、花言葉も知らなかった…」
あの時、レインの様子がおかしいことに気づいていたのにっ……!
「あいつは悲しんだ顔してた……!」
あいつは俺を、信じていたのにっ……!
「俺が何も知らなかった……ばっかりに……!あいつ一人に辛い思いさせて……!俺は、あいつにただ守ってもらってるだけの存在でしかない……!」
あいつがこの花を渡す理由は一つしかない……。
「あいつは、俺を裏切ってなんか……なかったんだ……!」
……逆だ。俺が最初にあいつを裏切ったんだ。疑ってしまったんだ。この気持ちも、あいつの気持ちも。
数日間、俺はあの悲しみから逃げようとした。そして、感情を押し殺していた。だが今、それは解き放たれた。一度溢れてしまえば、止まることを知らない。
「俺は、馬鹿だ……っ」
「……ショウマ」
ユミさんが俺の前に立つ。すると、パアンっと音が響き渡った。
「……!!」
俺は頬を片手で抑えた。そう、ユミさんは俺の頬を叩いたのだ。
ポカンとしていると、ユミさんは腕を組んでこう言った。
「私、知ってるわよ。あんたが太陽の貴族と関わっていること。そして、毎朝会っていたこともね。」
え……?どう、して……
「太陽の貴族の誰と会っていたかは知らないけど、その様子だと……あなたの想い人、かしら。」
なんで、知ってる……っ
「なぜ、って顔してるわね。それは……
あんたの家系が月の貴族だからよ。」
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