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昼を過ぎた頃。俺は、叔父様の座る玉座がある、あの時俺がショウマに酷いことをしたところで、婚約の儀式を行おうとしていた。
俺は今、その場所の入口、つまり扉の前に立っていた。それも、ヴァルド様の横に、だ。
俺は婚約の儀式用の衣装に着替えさせられ、軽く化粧をされ、今も尚、使用人が飾りを俺に付けている。それは、隣にいるヴァルド様も同じだった。
俺のすぐ側で飾りをジャラジャラと付ける音を聞きながら、俺は目の前の扉を見つめていた。
「……。」
ここに来ると、どうしても思い出してしまう。まるで、自分の罪を忘れるなとでも言うように、頭の中にふと思い浮かんでくる。思い出す度に、俺は胸が苦しくなって、涙が出そうになる。必然的にショウマのことも思い出してしまって、今更だが婚約したくないとも思ってしまう。
ダメだ……ショウマのことは、忘れないと……っ
俺は一度目を瞑って、気持ちを落ち着かせる。
俺はヴァルド様と、婚約するんだ。それに、疑われて、能力を叔父様に使われたりしたら……
そこまで考えて、止める。
身体が震えてしまうからだ。そんな時だった。
「……悪かったな」
っ!?
急に謝られて、俺は困惑する。
「なぜ、謝られるのですか……?」
ヴァルド様が俺に謝る理由なんて……
「なぜって……ほら、俺があの人達にお前に想い人がいるって言ったせいで、なんか色々あったんだろ……?」
ああ……そういうことか……。
「いえ、それは……すべて、私が招いたことなので……」
そもそもの話だ。俺が想い人がいると悟られなければ、ショウマと会うのを止めていれば、こんなことにはならなかった。
「……そうじゃないだろ」
ヴァルド様がそう言った時、「準備できました」という声が聞こえた。
「下がっていい」
ヴァルド様がそう言うと、使用人は揃って俺達から退き、去っていった。
「……。」
「……。」
しばらく、無言が続く。それを破ったのは、ヴァルド様だった。
「……もうそろそろだ。……儀式の最後に、キスがあるが……振りにするか?」
俺は、これがヴァルド様の気遣いだと気づきながらも、こう答えた。
「いえ……いいです。」
「……そうか。」
深くは聞かれなかった。
俺は酷い人間だ。ヴァルド様を利用しようとしている。でも、ヴァルド様はそれを分かって返事をしてくれた。
俺は“ありがとう”とヴァルド様に、心の中で感謝した。
そして、ギィィと音を立てながら開かれる扉を見つめながら、俺は前へ進もうとした。
「俺は……」
俺はヴァルド様を見た。その表情は、真剣そのもので、俺は不覚にもドキリとしてしまった。
「俺は、お前が誰を想っていようと、お前に惚れていることには変わりないからな。言っとくが、俺は本気だ。このことを忘れるな。」
それだけ言うと、前へ進み出す。
俺は、ヴァルド様に言われたことを心に刻んで、前へ進んだ。
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